どれが本当の西郷隆盛? 日本各地にそびえ立つ知らぬ顔の“西郷どん”像
今年のNHK大河ドラマの主人公は、「西郷(せご)どん」こと西郷隆盛である。言わずと知れた、明治維新の立役者で、上野に立つあの人だ。
ただ、この像、西郷の弟といとこをモデルに描かれた絵を元に作られ、その似てなさぶりは、除幕式に参列した東郷平八郎も閉口したほど。
1月7日放送の「西郷どん」初回は、まさにそんなシーンからスタート。西郷隆盛の死から21年。上野公園では西郷隆盛像除幕式が行われていた。いよいよ幕が上がり西郷隆盛像が現れると、参列していた西郷の妻・糸は「ちごっ、ちごっ! こんな人でなか」と叫ぶ――。
ならば、それとは逆に、生前の彼の姿に酷似している像はあるのだろうか。今後も歴史教科書に名が残り続ける偉人である。生まれ故郷の薩摩にならきっと存在するであろう。そう思って、色々と探してみた。
で、その結果がこの有様である。こけた頬に口髭を生やす像、温泉に入る短髪痩身の男前、丁髷(ちょんまげ)姿にでっぷりとした羽織姿……。共通項と言えば太い眉ぐらいなものだろう。
鹿児島の多くの方は、西郷隆盛のことを、「西郷」と呼び捨てではなく「西郷さん」と呼ぶ。尊敬の念を絶やさず、今でも身近な存在であることを示す呼称である。
なのに! 鹿児島にある西郷像のバラバラさ加減と言ったら!
聞けば、それには諸説あるそうで、清水寺の月照と入水自殺しながら一人生き延びたことを恥じているからという説。坂本龍馬の追悼のため、龍馬が好きだった写真を撮らなかったという説。明治天皇陛下に写真を求められたが辞退したという説。など、像同様に様々な説が存在する。
「薩摩には、名を残さず、功績を残さず、すべては殿さまのためという教えがありました。私は西郷さんもこの考えを貫き、私(し)を棄てて、写真を残さなかったのだと思います」
とにもかくにも写真が無いのでは似ている像が無いのは致し方ない。ただ、熱狂的なファンは、写真が無いから、各々の西郷像を心の中に、時に外に作った。それがご覧の像たちということなのだ。(撮影/福田正紀)