カゲが薄くても… カラヤン生誕110周年

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「どこへ?」乗り込んできた男に、タクシー運転手が訊ねた。

「どこへでも。世界中どこでも私を待っているんだ」

 この男こそ“帝王”と呼ばれた指揮者・カラヤン(1908〜89)その人だった。指揮者の代名詞でもあった不世出のマエストロが生誕110周年を迎える。

 この記念の年、お膝元のドイツ・グラモフォン社は目玉商品を用意しているのか? 銀座の老舗レコード店担当者が語る。

「日本のファン向けスーパーオーディオCDは継続して発売されます。カラヤン全盛期の名盤をリマスタリングしています。ドイツでは全ての録音を網羅した“大全集”が発売されました」

 とはいえ、若い世代にはカラヤンの名すら知らない音大生も。

 となると、その威光で“便乗商法”など及びもつかない。

 1981年の来日演奏会で勧進元だったTBSの関係者が回想する。

「指揮者としてすでに絶頂期は過ぎていました。ベートーヴェンの連続演奏会も棒の曖昧さから“運命”の第3楽章など空中分解寸前。73年の華麗な舞台が脳裏に焼き付いていたので、あまりに急激な老い方に愕然としました。亡くなる8年前で、ベルリン・フィル楽員との仲は最悪でしたね」

 チョットいい余話も。

「サインを貰おうと持参したドイツ盤レコードを見るや“この女性にプロポーズしたが、断られた”とニヤリ。ナレーションを女優のロミー・シュナイダーが担当した『ピーターと狼』で、ジャケットにはツーショット写真が掲載されていた」(同)

 嗚呼! シシーは帝王を袖にしていた?!

週刊新潮 2018年1月18日号掲載

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