“新規上場”の襲名 松本幸四郎についた初値は

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 新しくなって5度目の“春”を迎えた歌舞伎座は高麗屋三代の襲名披露公演で沸く(26日まで)。

 松本幸四郎が二代目白鸚(はくおう)へ、息子の市川染五郎が十代目松本幸四郎へ、さらにその息子の松本金太郎が八代目染五郎へ、という高麗屋の慶事が、歌舞伎座開場130年の幕開けを飾って連日の大賑わいである。

 わけても45歳の若き幸四郎への期待は高い。夜の部の「勧進帳」は歌舞伎十八番の一つ。かねて「あこがれ続けてきた役」と弁慶への思いを語っていた幸四郎。

「弁慶にしては線が細すぎるともいわれましたが、でも叔父・中村吉右衛門の富樫(とがし)、息子・染五郎の義経役を相手に、見事期待に応えていました。かなり修練を積んだのでしょう、最後の飛び六方も新鮮な躍動感を覚えました」

 とは、観劇した記者の評。

 早稲田大学教授で演劇評論家・児玉竜一氏もこう語る。

「十代目幸四郎は、堅実で責任感の強い性格。同世代は元より先輩からも広く人望を集め、高麗屋当主としてこの先の歌舞伎界を担うべき存在です。今回の公演は、それをしっかり印象付けたといっていいでしょう」

 ただ染五郎時代の彼には、こんな危惧もあった。

「根がマジメすぎるんです。それが役にも出て物足らなさを感じることがあった。歌舞伎以外の舞台では、アイデアに長け演出家としても才能を発揮する。ところが舞台では主役なのに、脇の引き立て役になってしまう。人がいいんだなぁ」(歌舞伎座関係者)

 今回の襲名披露は、幸四郎のいわば“新規上場”。

「期待以上の出来といっていいと思いますよ。伝統の型に則り、変に癖があるわけでもない。声量は大きく声質に張りがあり、口舌も滑らか。何より若々しい」(先の観劇した記者)

 公開価格を、暮れに新規上場した佐川急便並みの1600円とすれば、初値は20%アップ1920円といったところか。襲名興行は、2月も歌舞伎座で、4月からは名古屋、福岡、大阪、京都と続く。

週刊新潮 2018年1月18日号掲載

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