300種類が競う京王百貨店「駅弁大会」マニアが絶賛「知られざる名品」は?
駅弁大会には初出品
製造・販売を行う万葉軒(千葉県浦安市)の担当者にも話を聞いた。
「『トンかつ弁当』は昭和30年代後半から販売を開始したようですが、残念なことに記録は残っていません。千葉県における鉄道輸送は、観光の要素は少なく、職場や学校と自宅を結ぶ生活導線がメインです。当時の弊社経営者が注目し、手頃な量と価格の弁当を考え出すと、高校生やサラリーマンを中心に人気を呼んだんです。昔はコンビニがなかったですから、駅弁がその役目を担っていたんですね」
昭和40年代は価格100円だった。値上げを抑えるため、容器は折からプラスチックに変更、かまぼこも廃止するなど、涙ぐましい努力を重ねている。代わりにソースの味は昔と全く同じ。同社における売上個数の順位では、今でも1、2位を争う人気だという。
以前は「カツが薄すぎる!」と県外の購入客から厳しく指摘されることもあり、地元での販売にとどめていた時期もあった。万葉軒は駅弁大会の常連だが、なんと「トンかつ弁当」の出品は、今回が初めてだという。
担当者は「京王百貨店さんから『トンかつ弁当を出しませんか』と声を掛けてもらいました。実際、価格の安さから大会でも売れているようで、出荷数を増やすことが決まりました」と笑顔を浮かべる。
昨年から東京駅でも販売を開始した。またバレンタインには包装紙をピンク色に変える企画商品も準備中だ。伝統を誇る駅弁だからこそ、流行の意匠にも対応できるのだろう。
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