日本人初!「無補給単独」で南極点に到達した荻田泰永氏が語る“私の冒険家人生”
「ゾーマが強すぎた」
――とはいえ、基本的には「リスクは常にありますが、事前に対処して回避しているので表面的には何も起きない。危険なことばかり起こる冒険家は、言ってみれば『実力がない』から」と言う荻田氏。12年と14年に北極点に挑戦した理由については、RPGゲーム「ドラクエ」に喩えてこう説明する。
「北極点は一つの目標だった。中盤のボスを倒したところで、またスライムと戦っても楽しくないでしょう。バラモスを倒して、またバブルスライムには戻りたくない。最後はゾーマに行きたくなるじゃないですか。バラモスは倒したから、もうゾーマに行こうと。そして12年に初めて、北極点に挑戦したんです」
――……上記の例を補足すると、スライムは“ゲーム序盤の最弱モンスター”、バブルスライムは“それよりちょっと強い敵”、バラモスは“ラスボス”、ゾーマは“さらに強い裏ボス”である。スタート時点で120キロあるソリと共に、荻田氏はゾーマ征伐に向かった、ということになる。
「ソリの重さは徐々に減っていって、ゴールするときは120キロが40キロくらいになるイメージです。体重も10キロから15キロくらいは落ちます。装備は多くすれば安全ですが、その分スピードも落ち、日数がかかるようになる。結局また食料が必要になって、より重くなる……というスパイラルに陥るから、どこかで妥協しなきゃいけないんです。食料もきちんと計算します。例えば北極点の場合、最初は1日の消費カロリーは8000キロくらいなのに、摂取カロリーは5000キロ。摂取カロリーより消費カロリーのほうが少ないから痩せていきますが、それも計算の内で、出発前に太っておかなきゃならない。
冒険中の楽しみも食事くらい。朝はオートミール、昼はチョコレートバーのような高カロリーなものやナッツなど。夜はアルファー米に乾燥肉とかバターを入れて雪を溶かした水で煮ます。基本的には毎日同じものを食べますが、目の前にトナカイがいたら『新鮮な肉が歩いているぞ』と、もうお祭。ものすごくおいしい焼肉屋の肉も敵いませんよ。
けれども、初めての北極点挑戦は17日目で断念。目標は50~55日だったから、行程的には序盤でした。断念したことの一番の理由は、ゾーマが強すぎたから。単純にレベルが足りなかった。17ターン目でダメだったね」
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