40歳超ニートが全国に70万人! 日本を蝕む「中高年ひきこもり」

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殺人も襲撃も

 こうした「ひきこもりの高齢化」の放置は、単なる親子の「家庭内トラブル」に留まらないところが、この問題の深刻なところだ。

〈70歳父親が、ひきこもりの44歳長男を殺害〉(13年11月、広島県)

〈57歳ひきこもり男性が、パソコンを買ってもらえず、81歳父親を殺害〉(14年5月、三重県)

〈64歳父親を37歳ひきこもり息子が殺害。自宅解体で父親から見放されたと〉(15年3月、北海道)

 家族内殺人は最悪に至ったケースだが、32歳のひきこもり男性による、大分県宇佐市のこども園襲撃(17年3月)は、ひきこもりのストレスが外に暴発する可能性がゼロではないことを示している。

 事件に至らずとも、親の死後は生活保護を受けざるを得なくなる。その原資はむろん私たちの税金。こうした「高齢ひきこもり」が70万人もいれば、膨大な社会保障費が必要とされる。そのまま介護につながるケースも出てくるだろう。現にひきこもりの長期化、当事者の高齢化に伴い、冒頭のゴミ屋敷のように周囲との軋轢が、深刻な問題として顕在化してきている。

(下)へつづく

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黒川祥子(くろかわ・しょうこ)
ノンフィクション・ライター。1959年、福島県伊達市生まれ。東京女子大学卒業後、専門紙記者、タウン誌編集者を経て独立。家族や子どもを主たるテーマにノンフィクションを発表し続ける。主な著書に『誕生日を知らない女の子』(開高健ノンフィクション賞受賞)など。橘由歩の筆名でも『「ひきこもり」たちの夜が明けるとき』等の著作がある。

週刊新潮 2017年11月30日号掲載

特別読物「『40超えてもニート』が全国に70万人! 日本を蝕む『中高年ひきこもり』――黒川祥子(ノンフィクション・ライター)」より

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