40歳超ニートが全国に70万人! 日本を蝕む「中高年ひきこもり」
全国どこにでもある「ひきこもりの中高年齢化」
「8050問題」「7040問題」という言葉を、ご存知だろうか。50代のひきこもりの子と80代の親、40代の子と70代の親。ひきこもりが長期化して、当事者が中高年に達し、高齢の親の問題と併せて深刻な社会問題として浮上していることを指す言葉だ。
内閣府の「若者の生活に関する調査」(2016年)によれば、ひきこもりの若者は推計で全国に54万人いるという。驚きの数字だが、ここには40歳以上は含まれない。「若者」とは、39歳以下を指すからだ。
では、40歳以上のひきこもりは実際、どれ位いるのだろう。山形県のひきこもり調査(13年)によれば40歳以上がひきこもり全体の44%と半数に迫り、島根県の調査(14年)でもひきこもりで最も多い年代が40代で、40歳以上が53%、佐賀県の今年の調査では、40歳以上の割合が71%となった。機械的に当てはめれば、40歳以上のひきこもりは、全国に70万人近くも潜在していることがうかがえる。
長くひきこもりの支援を続けている、神奈川県逗子市のNPO法人「遊悠楽舎(ゆうゆうがくしゃ)」代表、明石紀久男氏は日本各地の支援施設を視察して確信したことがある。
「ひきこもりの中高年齢化はもはや、全国どこにでも見られる現象です。都市とか地方とか関係なく、日本全国にそういう親子がいる」
私自身、デビュー作『「ひきこもり」たちの夜が明けるとき』(03年)執筆時から、家族の問題としてこのテーマに関心を抱いてきた。1998年、精神科医の斎藤環が『社会的ひきこもり』を出版し、「ひきこもり」という存在が世に認知されることになっていたが、当時の取材で、10代の不登校児を中心とした支援から、10年ひきこもっていた20代後半の若者へと、支援対象がシフトする「潮目」をまざまざと見たものだ。
あれから20年、支援という外部の手が届かなかったひきこもりが今、40代、50代に達している。彼らの親は、主に高度経済成長期にサラリーマンとして過ごし、給与は右肩上がり。経済的に裕福で子を抱え込むことができていた。しかし親が高齢となって、自身の病気や経済問題で立ち行かなくなり、外へSOSを発することで、中高年ひきこもりの存在がようやく、明るみに出ることとなったのだ。
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