嫌老社会で「被差別高齢者」にならないためのサバイバル術 和田秀樹が説く
嫌老社会で「被差別高齢者」ならないためのサバイバル術――和田秀樹(上)
65歳以上が人口の3割に迫り、若い人もいずれ平等に老いるのに、日本は高齢者差別がまかり通る「嫌老社会」だという。座して「被差別高齢者」になるほかないのか。否! 高齢者専門の精神科医として長年の経験がある和田秀樹氏が、サバイバル術を伝授する。
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2016年の総務省の統計で、日本の65歳以上の人口は推計3461万人。総人口の27・3%に当たる。
とはいえ、今日の70〜80代は、脳梗塞の後遺症や大腿骨の骨折などが原因で、歩行困難や寝たきりになっていなければ、たいてい通常歩行ができ、若い人と同じような日常生活を送ることができる。
赤瀬川原平さんも『老人力』に書いているが、老いは人間的な成熟である。だから、身体や脳の機能が衰える一方、つまらないことにこだわらなくなるなど、プラスの面もある。
それなのに、この日本では高齢者差別がまかり通っている。私は高齢者専門の精神科医として、30年にわたる経験があるが、そのなかで、なんでも高齢者のせいにするとか、声を出せないのをいいことに高齢者を叩くさまを、頻繁に見聞きしてきた。
たとえば、お年寄りが物忘れがひどくなったり、あまり着替えなくなったりした場合。認知症の可能性もあるが、医者は治療できるうつ病を疑ってもいい。ところが「年だから仕方ありません」と診断し、適切な治療をしないケースが多いのだ。これは、医者の無知が原因で起きる高齢者差別といえるだろう。
また最近は、高齢者ドライバーの事故を機に、高齢になったら運転免許を取り上げろ、と簡単にいわれる。都心に住む人はそれでもいいかもしれないが、田舎では移動手段がなくなって買い物も困難になってしまう。その結果、家にこもりがちになり、2、3年で要介護状態になるという可能性が高まるのだ。
実は、年間ベースで見ると、80歳以上でも99%の人は事故を起こしていない。事故が最も多いのは10代、続いて20代。80歳以上は3番目だ。高齢者の事故の絶対数が増えているのは、高齢者人口が増えている以上、当然のこと。ところが若い人の事故については触れず、高齢者の事故だけを問題にするのは、高齢者差別だといえる。
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