監視と縛りの日常生活“ブラック集落”を避けるには 移住民が落ちた「村八分」地獄
“ブラック集落”
だが、北杜市が常々標榜するのは「一流の田舎まち」。手をこまねいているばかりではない。担当者が言う。
「今年の春、市としてもそれぞれの自治会にアンケートを行いました。移住者を受け入れるうえでの不安材料がないかや、受け入れを歓迎するかしないか、自治会への加入率や区費・組費といった内容です。市としては、そうしたアンケートやヒアリングをもとに、移住の相談があったときに、“このあたりは移住者をウェルカムとしていますよ”とか、逆に“ここはちょっと”、といった細かいアドバイスができるように準備しています」
不動産屋の口車に乗せられて、煽られるままにすぐに手を付け、移住してはじめて“ブラック集落”であることがわかったときには目も当てられない。たとえば、築浅なのにオーナーが手放そうとしている物件は、周辺の地域性を念入りに調べたほうがよいだろう。「暮らすに暮らせない」場所でありうるからだ。
最後に、先頃、集落内で発生した、ある“衝突”の現場を再現してみよう。
現在、北杜市は、中央道と軽井沢側の上信越道を結ぶ中部横断自動車道のルート決定をめぐって八ヶ岳南麓を二分する「戦争状態」にある。
補償費を含めた現金収入につながると目論む賛成派の集落古老。これに対して移住派は、目の前が高速道路では都会と変わらないから、当然反対となる。
公民館での会合は紛糾したという。トドメは集落古老による一言だった。
「この土地は、俺たちが信玄公から代々預かって、管理し続けてきたんだっ」
400年以上前の武田信玄を持ち出されては、何かとインテリを自任する移住者達は沈黙するしかない。理屈ではないものが支配している社会が厳然としてあることを、悟ったのだろう。経済的に余力のある者は、「やっぱり管理費を払ってでも」と、別荘地内に“リハウス”してくるのだ。
結論はやはり、集落移住は×、移住するなら別荘地、ということに落ち着きそうだ。
***
[3/3ページ]