移住者はゴミ出し禁止、絶対の年功序列… 移住民が落ちた「村八分」地獄

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飲酒運転天国

 たとえ村八分にまで至らずとも、集落での緊張関係・揉め事・軋轢は日常茶飯事だ。

 北杜市のみならず、甲州地方の集落は「年功序列」が徹底している。1カ月どころか、1日でも生まれたのが先ならば、同輩ではなく「先輩」なのだという。それゆえに、役所による地元集落への「指導」も、よほどの法令違反がない限りはご法度となる。笑えないジョークでしかあるまい。

 当然のことながら、集落においては公私の区別など存在しない。公務員、警察官であったとて、生活圏での人間関係では、古老に頭が上がらない。

 それを見越した古老らは狡猾だ。夕刻になればコンビニで買ったビールを勢いよく流し込み、酒臭い息で悠然と軽トラのアクセルを踏んでいく。直進車無視の右左折強行、ウインカー不点灯、一時停止無視、携帯電話片手の通話運転、まるで飲酒運転天国。山梨県下では「マイルール」「山梨ルール」などと称され、もはや道交法などどこ吹く風、なのだ。

 夜ともなれば、スナックに平然と車で乗り付け、酒を飲んで帰っていく。そんな行為を咎めようものなら「村八分」にされかねないから、誰も指摘しない。

 無邪気な移住者はそうした地域性の洗礼を受け、結果、ノイローゼにもなりかねないのである。

(下)へつづく

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清泉亮(せいせん・とおる)
ノンフィクション・ライター。1974年生まれ。専門紙記者などを経てフリーに。別の筆名で多くのノンフィクション作品を手掛けてきた。近現代史の現場を訪ね歩き、歴史上知られていない無名の人々の消えゆく記憶を書きとめる活動を続けている。信条は「訊くのではなく聞こえる瞬間を待つ」。清泉名義での著書に『吉原まんだら』『十字架を背負った尾根』がある。

週刊新潮 2017年11月23日号掲載

特別読物「大分県の人権侵害より凄絶! ゴミ出しすら許されない!? 移住天国の夢想家が落ちる『村八分』地獄――清泉亮(ノンフィクション・ライター)」より

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