藤田まこと、阿藤快の命を奪った「隠れ動脈硬化」 “元凶”・脂質異常のしくみ
“小さな殺人者”を見逃さないために
もっとも、日本動脈硬化学会名誉会員で柏市立介護老人保健施設「はみんぐ」の多田紀夫施設長は、こう明言する。
「これまで動脈硬化は不可逆的とされてきましたが、現在では、血中のLDL値を下げると病変が改善されることが分かってきました」
では“元凶”たる脂質異常のしくみに迫ってみよう。多田施設長が続ける。
「体内の細胞膜、性ホルモンなどのステロイドホルモンや油の吸収を助ける胆汁酸などは、コレステロールで作られます。中性脂肪も、細胞の活動エネルギー源となるなど、ともに人体には必要不可欠な物質なのです」
食事で摂取されたコレステロールは、特殊なたんぱく質とともに「リポたんぱく」という水溶性の粒子となって血液中に運ばれる。この粒子は低比重のLDLや高比重のHDLなどに分類され、前者は血管壁に取り込まれてコレステロールを蓄積し、動脈硬化を引き起こすため「悪玉」と呼ばれ、後者は溜まったコレステロールを取り除く働きをするので「善玉」と呼ばれる。
一方で小腸から吸収されて血中に入った脂質のうち、エネルギーとして使われずに残った中性脂肪は内臓脂肪や皮下脂肪として蓄えられるのだが、中性脂肪を多く含むリポたんぱくが血中で増加するとHDLを減少させてしまうだけでなく、
「小型で酸化されやすい『超悪玉LDL』や、悪玉化しなくても血管内膜に入り込んでしまう『レムナント』など、恐ろしい粒子を生み出してしまいます」(同)
こうした“小さな殺人者”を食い止めるには、まず自身の正確なコンディション把握が不可欠である。
「動脈は、程度の差はあれどの部分でも詰まるおそれがあります」
そう警鐘を鳴らすのは、齋藤康・千葉大名誉教授。
「閉塞性動脈硬化症が疑われても、脳や心臓に比べて大したことはないとつい思ってしまいます。あるいは血圧が高くなってきたら腎動脈の閉塞のおそれもあり、『何となく変だ』という原因を、動脈硬化と結びつけて考えるのが大切です。肩や頭の痛み、ふらつきや筋力の低下であっても、まずは疑ってみましょう」
日常に潜むシグナルを見逃してはならないのだ。
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