「JR貨物」上場に期待? 「佐川急便」好スタートで
株式市場では活況が続いている。今年最大の上場は、佐川急便の親会社「SGホールディングス(HD)」だった。証券業界は来年も大型企業の新規上場を待望しているが、その1社はかつて“万年赤字”と揶揄された企業なのだ。
「優秀な人材が集まるような企業にしたい」
SGHDが上場した12月13日、町田公志(ただし)社長(61)はこう抱負を語った。最近、SGHDでは不法駐車の身代わり出頭や荷物の乱暴な扱いが発覚したばかりか、残業代の未払いなど不祥事が続いている。それで上場前には“高値が付くはずがない”と、不安の声も上がっていたが、
「SGHDは、好スタートを切れましたね」
こう笑顔で語るのは、大手証券会社の営業マンだ。
「初日の株価は、売り出し価格1620円を大きく上回る1906円で取引を終えました。SGHDが投資家から支持されたことは、来年度にも上場が噂される“あの会社”にも追い風になるでしょう」
“あの会社”とは、1987年の民営化後に設立された日本貨物鉄道(JR貨物)を指す。ちなみに、株式を100%保有するのは、国交省所管の鉄道建設・運輸施設整備支援機構なる独立行政法人だ。
「JR貨物は鉄道事業の赤字を黒字の不動産事業が埋めてきたが、ここ数年は業績も好調。昨年度の決算は、鉄道事業が10年前に事業別開示を始めて以来初の黒字5億円を計上し、当期利益は120億円と過去最高益を達成しています」(同)
JR貨物が過去最高益を出したのには、2つの理由があるという。経済誌のデスクが解説するには、
「ネット通販の普及で輸送需要は年々増加しているが、トラックドライバーの平均年収は480万円と決して高くない。SGHDは上場で得た資金をドライバーの待遇改善に充てると明言しているが、いずれ人件費が送料に上乗せされるのは間違いありません。それに比べてJR貨物は“安全、確実、低コスト”で大量に物資を運べるので、大企業の利用が増えているのです」
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