女優として生きるため“14歳で15キロ増量”――富田望生は「脇役の星」

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監督が「松子、食え」

 再び転機が訪れたのが、映画「ソロモンの偽証」のオーディション。現役中学生を大規模に募集し、長期間の選考が行われた。主役の審査は順調に進んだが、浅井松子役の候補者が不足し、追加募集が行われた。小説で「太っている」ことが明記された役だ。

「その頃、ふっくらはしていたと思うんですけど、太ってはいませんでした。でも、当時の事務所の方が『とにかく応募しよう』と進めて頂いたんです」

 面談、カメラテストと進み、決め手となったのは成島出監督(56)のワークショップ。「詩を読んでください」と監督に指示された。朗読したが、成島監督は無表情。駄目かと諦めたが、後日、監督から「感動した」と褒められた。

 しかし、合格してからが大変だった。監督に「あと20キロ太ってください」と指示されたからだ。

「とにかく食べました。それしかなかったです。撮影中でも様々な食事が用意されていて、監督が役名で『松子、食え』って命令するんです(笑)。親戚が福島でお米屋さんを経営していて、東京でも地元の美味しいお米は食べられていました。母も一生懸命、料理を作ってくれたんです。特に野菜の煮物が大好きですね。そして最後は、お餅と団子が太ることを学びました。特に夜、寝る前に食べると確実に太ります。それでも20キロは無理でした。最終的には15キロのプラスで終わったんです」

 無我夢中で役作りに取り組んだ。そして撮影が始まり、完成を迎えた。監督と共に故郷を訪れてPRに励み、いわき市の友達とも一緒に地元の映画館で「ソロモンの偽証」を観た。嬉しかったが、そこに映っていたのは自分であって自分でないような、不思議な女優だった。

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