韓国のアイドル「SHINee」ボーカル・ジョンヒョンさんの輝きと影(墓碑銘)

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 訃報が衝撃を与えるのは、日本人だけとは限らない。今年2017年も、日本に縁のある様々な外国人の他界が報じられた。週刊新潮の連載コラム「墓碑銘」のオリジナル記事として、韓流スターのジョンヒョンさんの、あまりに短すぎる生涯を振り返る。

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 東京ドームを軽く埋め、2017年だけで日本で40万人以上を動員した実績を持つ。SHINee(シャイニー)は、韓国の5人組男性アイドルグループだ。

 シャイニーとは、「光を受けて輝く人」という意味の造語。そのメインボーカルのジョンヒョンさん(本名・金鍾鉉、キム・ジョンヒョン)が、12月18日、27歳の若さで自ら命を絶った。

 ジョンヒョンさんの姉が、「弟から自殺をほのめかすようなメッセージを受けた」と警察に通報。携帯の位置情報をもとに警察はソウル市内の宿泊施設で倒れていたジョンヒョンさんを発見する。練炭らしき物を燃やした跡があり、搬送先の病院で死亡が確認された。

 悲報の3日前の12月15日、18年2月に京セラドーム大阪と東京ドームで合計4回の公演を行うことを発表したばかり。ジョンヒョンさんは12月にソウルでのソロ公演も成功させてもいる。

「韓国では芸能人の自殺は多いのです。とはいえ現在もトップクラスの人気を誇るアイドルが死を選んだ例は聞いたことがありません」

 と韓国芸能界の取材を続けてきた女性誌記者も驚く。芸能評論家の肥留間正明さんは解説する。

「韓国はインターネット上の意見が世論と言われるほどネット社会です。過去には中傷や根も葉もない噂を書き込まれ精神的に追い詰められて自殺した女優もいます。今回、ジョンヒョンさんはネット上で攻撃されていませんが、韓国の芸能人を取り巻く環境は過酷です」

 90年、ソウル生まれ。東方神起や少女時代を擁する韓国のSMエンターテインメントに見出された。

「韓国の大手芸能事務所は、世界で売る戦略が徹底しています。歌やダンスを基礎から鍛え、日本語、英語、中国語も習わせる。世界中の音楽を研究して作った自信の曲に英語のタイトルもつけるのはネット検索されても必ず表示させるためです」

 と、韓流アイドルに詳しいジャーナリスト。

「韓国の音楽市場の規模は日本のざっと20分の1ほど。韓国のファンは移り気ですが日本はトコトン応援する」

 08年にデビューしたシャイニーは韓国ですぐに圧倒的な支持を集め、11年から本格的に日本で活動している。

「日本のアイドルと完成度が違う。愛しているよとステージから呼びかけたり、観客との一体感を生み、楽しくて幸せな気持ちにさせる。ジョンヒョンさんは躍動感のあるボーカルでバラードも歌える。歌を聴かせ、切れの良いダンスでも魅了した」(先のジャーナリスト)

 5人一体が持ち味だった。

「爽やかで清潔感もある正統派アイドル。服装など流行を牽引する役目も担っていた」(先の女性誌記者)

 欧米でも人気で、韓国訪問中のオバマ前大統領がシャイニーに言及したことも。

「仲が良く、メンバーが全く変わらずに続いているグループは珍しい。競争が激しく、次々に新しいグループが誕生するなか、トップ級の人気を9年保ってきました」(先のジャーナリスト)

 10年には女優のシン・セギョンさんと親しく歩く姿が報じられると、双方が潔く交際を認めたこともあった。

「取材に丁寧に応じ、礼儀正しい。作詞作曲も得意でした」(先のジャーナリスト)

 18年2月の日本公演は、最年長のメンバーが兵役に就くため、入隊前に5人が揃う機会と意気込んでいた。

 ジョンヒョンさんは友人のミュージシャンに遺書を託していた。そこには鬱に苦しんでいた姿が窺える。

「コリア・レポート」の編集長、辺真一さんは言う。

「韓国では孤独感や感情の起伏の激しさが自殺の主な原因です。自己責任の取り方としての自殺はほとんどありませんが、ジョンヒョンさんはメンバーの一員として役割を最後まで果たそうとしていたと感じます」

 告別式では残されたメンバーや同じ事務所の仲間が棺を運び、ファンの弔問の列は2km以上にも及んだ。

週刊新潮WEB取材班

2017年12月31日掲載

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