詐欺容疑で逮捕「スパコン社長」事業に公金100億円 融資の背景に疑問の声
“120億円”を急ぐ必要は
では、文科省はなんと答えるか。
―――齊藤氏への融資は28年度の“緊急募集”として行われているわけですが、その募集期間は極めて短いことが疑問視されており、しかも120億円のうち半分にあたる60億円を申請した齊藤氏の事業がすんなり採択されている。そもそも文科省と財務省の間で、齊藤氏の会社に融資されることが予め合意されていたのでは。
「そのような事実はありません。緊急募集は補正予算であり、補正予算は緊急性があるからこそ、です。特定企業を念頭において予算措置をしたことはありません」
――予算が閣議決定されたのは8月2日で、締め切りは10月25日。12月末でもよかったのでは。
「決定は『産業構造改革あるいは生産性向上の取り組みを加速するように』とのことですから、急がなくてはなりません。審査にも時間がかかりますので、12月に締め切っていたら、年度内に執行できません」
――補正予算は緊急性があるからこそ、とのことですが、この事業に緊急性はありますか。この120億円は急ぐ必要があったのでしょうか。
「いや、経済対策は、みなそういう性格のものですから」
と反論する。緊急性とはペジーの資金繰りだったのではとさえ思われるが、同省OBの寺脇研氏によると、
「補正予算が理由だとしても年度末までに形にすればよいのだから通常募集で事足りる。何もたった14日間でやらなくても良い。額が大きいですから政治マターでしょう。最大限悪く取ると、官邸トップのお友達だからこれだけの額の融資が決まったんじゃないのと言われても仕方がない。更に、ああいう書類はそう簡単に出せるものではない。加計学園問題の時も似たようなことがありました。京都産業大学には絶対に間に合わない準備期間が設定されていたということと同じじゃないかと疑ってしまいます」
ペジーを誉めそやした麻生氏は当の財務省トップであり、しかももともと有力な文教族議員としても音に聞こえている。単なる偶然の巡り合わせなのか。
いずれにせよ、国民から絞った膏血(こうけつ)を回した先が詐欺師とは洒落にもならない。
「国民の方々が不公正、不公平と感じるような、氷山にたとえると水面下に隠れていて見えない事件を手がけていきたい」(捜査の指揮を執る森本宏特捜部長)
給与所得控除縮小などの大増税決定に悲鳴をあげるサラリーマン諸兄がいくらか報われる日は来るだろうか。
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