政治状況を冷徹に認識していた「君主」としての昭和天皇──日本人と象徴天皇(2)
前回の記事で述べたように、「象徴」という言葉は近代の日本語において、一般的に使われている言葉ではなかった。その語に意味を与え、肉付けしていったのは、新たに「象徴」となった昭和天皇の行動と言説だった。
日本国憲法の第1章「天皇」は全8条からなるが、第4条にはこう書かれている。
第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
大日本帝国憲法で「統治権を総攬」していた天皇から、「国政に関する権能を有しない」天皇へ。...