長寿世界一「香港」を支える“大きな薬”と“生き甲斐探し” 現地レポ
「生き甲斐探し」の重要さ
香港島の西環(サイワン)地区にある、デイケアセンターを訪ねた。
「センター自体は、公営私営あわせて香港に41あります。こちらはプロテスタントの団体が運営しており、会員制で年会費23香港ドル。平日の日中と土曜の13時までは、いつでも自由に来館して好きなことができます」(センター長の岑(サン)さん)
会員はおよそ1100人。運動器具や血圧測定器は無料で使え、食事もできる。朝食はおかゆやオートミールなど6香港ドル、昼夜は各11香港ドル。イベントや講義も500種ほど用意され“生き甲斐探し”に役立っているという。
例えばバイオリン教室、切り絵体験や合唱団、そして日本への旅行など。73歳の男性会員・華(ワー)さんが言う。
「私はここの講座で、パソコンの使い方やインターネットでの検索の仕方を教わりました。以前は調べ物もできず、孫にも『そんなことも分からないの』と馬鹿にされ、自分を卑下していたのです。ボランティアの学生さんが一から教えてくれ、自分でこなせるようになったことで、子どもや孫とも会話が増えて見識が広がり、一緒に習った初心者の人とも友達になれた。今は4つのセンターの会員を掛け持ちしていて、各地の友達と話すのが楽しみです」
お茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二院長が言う。
「スウェーデンで『社会的な交流頻度と認知症の発症率』に関する調査が行われました。1人暮らしで友人や家族の訪問が週に1回未満の人の年間発症率は1000人中160人だったのに対し、家族と同居し、友人や子どもらが週に1回以上訪ねて来る人は1000人中20人という結果でした。他人との交流は、それほど健康に重要なのです」
よく食べてよく動き、よく喋る。香港に学べば、長寿世界への扉は日本でも探せるに違いない。
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