長寿世界一「香港」を支える“大きな薬”と“生き甲斐探し” 現地レポ
現地レポート「香港」で見つけた長寿世界への扉(下)
2016年の統計で、男性は81・32歳、女性は87・34歳と、ともに世界一の平均寿命を誇る国、香港。その長寿の秘訣を探るべく現地を訪れると、30年以上毎朝坂を上り下りする80歳や、1日150回のスクワットを朝の日課にする74歳、はては若者と共にバスケットボールを楽しむ67歳など、目をみはる運動習慣が明らかに……。
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むろん運動は、屋外で行うばかりではない。実地調査などで香港を度々訪れた、武庫川女子大学国際健康開発研究所の家森幸男所長が言う。
「香港の人は、日常的に体を動かす習慣が身についています。私が血圧測定や聞き取りをした90歳男性は、全く異常なし。聞けば、6階建てアパートの最上階に住んでおり、エレベーターがないので毎日階段を上り下りしているとのことでした」
週末の昼下がり、ともに90歳を迎えた許(ホイ)夫妻を訪ねた。3人の子と4人の孫に恵まれ、現在は2人暮らし。自宅はマンションの5階でエレベーターはなく、外出のたびに階段を使うことになる。妻に尋ねると、
「30年以上、平日の朝は毎日『長者中心』(デイケアセンター)に、太極拳をしに出かけていましたが、6月の雨の日に階段で転んでしまって、今は歩いて10分の診療所でリハビリとマッサージをしています」
加えて現在は、朝食の後の散歩が日課だという。
「買い物はいま娘に頼っていますが、料理は自分で毎日作ります。朝はパンかクラッカー、または牛乳でオートミールを少し。散歩から戻ったら昼食。馬頭魚(マータウユウ)という白身魚が1尾20~30香港ドル(約290〜435円)で買えるので、蒸して食べます。おやつは食べずに、夕食は18時頃。好きなのはサーモンの骨と豚肉、トマト、ニンジンを入れたスープや、豚肉と青大根、白木耳(きくらげ)のスープです」
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