平均寿命世界一! 「香港人」の運動習慣 急勾配を上る80歳、スクワット100回超の74歳…
おなじみ太極拳
さて香港の朝といえば、太極拳が定番。別の日、その一大スポットを訪れた。湾仔にある公園「修頓遊樂場」は、周囲の交通量も多く朝から賑やかで、青空のもと、超高層ビルと公園の緑とが重なって視界に入る。
すでに7時には、園内で20~30人が思い思いに準備運動やウオーキングにいそしんでいる。その中で、柵にしがみついて延々スクワットを続けているのが、74歳男性の荘(ジョン)さんだった。
「俺は太極拳はやらない。この屈伸運動が朝の日課だ。70歳を過ぎてからは1日150回と決めている。だって、これができないとトイレでしゃがめないだろ」
隣で動作を真似るが、柵に掴まるため全身の筋肉を使わねばならず、実に辛い。その場を辞し、太極拳の開始を待つ88歳女性・朱(ジュ)さんに聞くと、
「平日は毎朝来ます。先生が来るのが8時なので、私は5時に起きて、まず公園の外を4周歩き、準備体操をして待っているのです」
かれこれ4時間以上、朝の運動をこなす計算になる彼女は、この日の最高齢参加者であった。ほどなく講師の女性が現れ、こちらも輪に加わる。参加者はみな型を覚えており、講師とともに悠然と動く。気がつけば50人に膨れ上がり、一糸乱れず舞うさまは圧巻だ。
あたふたしていると「前を向いて」「足が逆」と、周囲がジェスチャーで教えてくれる。十数分を乗り切って水分を補給すると、皆がカバンからお揃いの赤い扇子を取り出した。広げると、上半身が隠れるほど大きい。近くの女性に借りたものの、片手で持って動くだけでふらついてしまう。流れるような動きの参加者には程遠く、まさに酔っ払いの千鳥足。一斉に扇子をバサッと広げる場面でも、ひとり不格好な音が響いてしまった。
眼が回って困憊したところで、講師の楊秀闌(ヨンサンラン)さん(73)に尋ねると、
「健康のためには、運動を最低でも1日30分はしないといけません。太極拳は、骨や体幹が鍛えられて四肢が強くなり、ゆっくりと継続した全身運動なので血液の循環も良くなります。素手の型は、大体3カ月続ければ全部覚えられますよ」
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