大学は出るけれど「桐生祥秀」陸上部なき意外な“就職先”

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 小津安二郎監督が描いたのは、就職難で「人生の選択」に悩む学士サマの姿だが、来春に卒業する彼の場合はどうだろう。日本人初の男子100メートル9秒98を為し遂げた桐生祥秀(21)。明らかになったのは、陸上部なき意外な“就職先”だった。

 大学生活最後となった9月の日本学生陸上競技対校選手権で「10秒の壁」を打ち破った桐生は、まさに「今年の顔」である。

 年末恒例の新語・流行語大賞で特別賞を授かり、大手新聞社が主催する年間スポーツ大賞を総ざらい。母校で開かれたイベントでは、

「2028年のロス五輪まで現役を続行します」

 と高らかに宣言し、来季はアジア大会に出場予定だ。

 来たる東京五輪が最大の見せ場となる桐生にとって、卒業後の環境はその成否を決める大事な条件となる。それだけに、彼のチョイスは注目を集めていたが、

「4月から保険大手の日本生命と所属契約を結ぶことが決まりましたけどね。社名の入ったゼッケンがつき、五輪へ向けた広告塔として申し分のない逸材ですが、社内に肝心の陸上部がないんです」

 とは、陸連の関係者。実際、日本生命には野球部と女子卓球部しか存在しない。

「つまり、実業団における指導者やトラックなど練習施設が用意できません。その代わりに、彼は契約金を貰える上、練習に専念できる“保険”を手に入れたのです」(同)

 卒業後も、埼玉県川越市にある東洋大の陸上競技場に通ってトレーニングを続けるという。

「大学からすれば、桐生と一緒に練習できると全国の受験生にアピールできますからね。陸上界の慣例で、有望なOB選手に対しては、施設や監督コーチの指導は無償で提供されます」(同)

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