「山城新伍」さんは、織田信長みたいな人だった… 「せんだみつお」が語る昭和のスター列伝
満五郎と呼ばれて
――ではここで再び、せんださんなりの「お別れの会」をしましょう。楽しかったことを思い出しながら。
せんだ 山城さんといえば、僕の中ではやっぱり、まずは“三日月刑事”かな。「うわさのチャンネル!!」の中に「三日月刑事・暁にほえろ」っていう僕たち2人のコントのコーナーがあったんだよ。山城さんが三日月刑事で、僕が毎回、謎の容疑者として取り調べを受けるんだけど、その正体は“満五郎”っていう痴漢なんだ。
――痴漢満五郎ですね! 正体を明かしたくなくて、取り調べでいつも別の名前をのらりくらり言うという。
せんだ 「お前は誰だ!?」「ワタシハ中国人ノ萬江仙デス」「何だって? もう1回言ってみろ」みたいな(笑)。結局、僕は山城さんにとって満五郎だったんだろうなぁ。山城さんには「満五郎」とか「満ちゃん」って呼ばれてたから。しかも最後まで。最後にお会いしたとき、杖をついて手も震えているような状態だったんだけど、「お体、大丈夫ですか?」って聞いたら「大丈夫だよ、満五郎……」って。
――そのエピソード、かなり胸にきました。
せんだ 山城さんの明と暗を思うとね……。あ、今、明と暗って言って思い出したんだけど、虚無僧が胸の前に持ってる箱って、たしか「明暗」って書かれてるよね! はじめに、山城さんが大部屋時代、侍じゃなくて虚無僧の役をやりたがったって話をしたじゃない。山城さん、この世界に入ってすぐ、その後の人生を暗示するような文字を胸の前に掲げてたってことか……(絶句)。
(取材後に調べると、虚無僧の偈箱(げばこ)に書かれた「明暗」の文字は、単に「明暗寺」という寺の名を意味するものだ、とのことでした)
(取材・文=塚田泉)
[4/4ページ]