「長嶋茂雄」中華料理屋“お会計事件” 「せんだみつお」が語る昭和のスター列伝
この長嶋茂雄、たいへんなことになるでしょ?
――ではもう少し、長嶋さんのチャーミングな面を振り返っていただきましょうか。
せんだ そんなこと言ったら際限ないけど……じゃあ、長嶋さんが巨人軍の監督に復帰した頃の話をひとつ。僕が某TV局の受付の女性と某ホテル内の某中華料理店で食事をしていたところ(笑)、長嶋さんとその運転手さんが、2人でやってきたことがあったのよ。ちょうど他に席が空いてないってことで長嶋さん、僕たちのテーブルに近づいてきて「ここ、一緒にいいですか~?」って座ったんだ。そうしたらその女性、ナマの長嶋さんを前にブルッちゃってねぇ。そんな彼女を前に、「これ、おいしいんですよ~」とか言って屈託なくネギそばを食べていた長嶋さんが、食べ終わって「お先に」って立ち上がったとき、すごいことを言ったんだよ。ニヤニヤしながら僕らに向かって「せんちゃん、(このホテルの)部屋取れるよ。取る?」って!
――あの長嶋さんが、“そっち系”の気遣いを!?
せんだ ねぇ、だから僕もびっくりした。でもこの話のオチはそっち系じゃないんだ。そもそも僕とその女性とはそんな仲でもないから「いえいえ、けっこうですから!」って返したら、「そう? じゃあもう行くね」って言いながら長嶋さん、僕たち4人の伝票をスッと手に取ったのよ。まあいちおう僕も「いやいや、ここは僕が!」って制止したんだけど、長嶋さんはこう言うんだ。「何言ってるの。せんちゃんにおごってもらったなんていったら、この長嶋茂雄、たいへんなことになるでしょ?」って。
そうやって長嶋さんがカッコ良くスマートに立ち去ったもんだから、女性はさらに興奮しちゃってね。「何で長嶋さん知ってるの!? おごってもらうほど仲いいの!? しかも私までおごってもらえるなんて!?」って。
――長嶋さんと面識があるということで、せんださんの株が急上昇したと。
せんだ いやでもそれがさ……じゃあ僕らも帰ろうかってことでレジを素通りしようとしたら「あの、お会計を……」って、店員さんに呼び止められたんだよ! 「あれ? でもさっき長嶋さんが……」「いえ、いただいておりません」。すべて忘れて会計通過! しかも長嶋さんの分も……って! 結局僕が払いましたよ、4人分(笑)!
――(笑)。しかしカッコ良く言い放った「この長嶋茂雄、たいへんなことになるでしょ?」ってセリフ、何だったんでしょうかね!?
せんだ 伝票を持った瞬間に、お会計すること忘れちゃったのかな? だから、おちゃめ? うっかり屋さん? まあとにかくチャーミングな人だなあと思うよね。
――きっとアレですよ、伝票を背広のポケットに入れちゃったんですよ。
せんだ うはは!「イン・マイ・ポケット~」ってね! は! 失礼なこと喋っちゃったね! 長嶋さんにはネギそば代の何百倍の、それこそお金には代えられないようなものを、十分すぎるほどいただいてきたにもかかわらず……。
(取材・文=塚田泉)
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