障害者芸人ホーキング青山「忖度は不要だ!」 障害者が戸惑う“過剰な気遣い”とは
ある駅員さんの話
「じゃあ、どうすればいいのか、簡単な正解はありません。ただ、私自身は障害者の方も、もっと理解されるための努力をしたほうがいいのでは、と感じることがあります」と語る青山さんは同書で、こんなエピソードを披露している。
一時期、とある駅を定期的に使わなければならないことがあった。しかし、そこの駅員の感じがものすごく悪かった。最初は困惑もしたし、気分も良くはなかったが、青山さんは、お礼だけは言ってその場を去った。
その後もいささか憂鬱な気持ちでその駅員とは顔を合わせ、世話になったお礼だけは口にするようにしていたところ、出会って3カ月ほど経ったときに、こんなことを言われた。
「あなたは明るいね。いつもかけてくれるお礼の言葉を聞いてれば声でわかる。前にこの駅に来てた車イスの人はまあ横柄でこっちが手を貸そうが何をしようが何も言わない。それは別に仕事だから良いけど、ある時世間話でもしてみようかと思って『こちらに来られるのは仕事か何かですか?』って聞いたら『この駅に車イスで来るのは仕事じゃなきゃダメなのか!?』っていきなり凄まれちゃって。あまりにも感じが悪くて正直嫌いでした。でその後今度はあなたが来られてまたおんなじような人だったら嫌だな、とずっと思ってたんですけど、いい人で良かった」
わだかまりの原因がわかった青山さんは、自分には責任は無いものの、なぜかその駅員に謝っていた。
「車イスで来て、お世話になっているのに感じが悪くて申し訳ないです。すみません」
その後、この駅員と青山さんはすっかり打ち解け、他の駅に異動になるまで親しくしたという。
正解は存在しないかもしれないが、このエピソードは一つの道を示唆しているのかもしれない。青山さんはこう語る。
「障害者(やその支援者)が往々にして、わりと強硬な態度に出る心理は理解できなくはないんですが。駅員さんに毒づいた奴は論外でしょう。私個人は、とにかく障害者と健常者の接点が増えること、そこでお互いに常識に基づいたコミュニケーションを取ることで理解が進んでいくと考えています。互いにわからないことは率直に聞きあう。無駄に忖度しないほうがいいと思います」
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