「平成」が終わる元号の変わり目に「皇族」を騙る「不敬の詐欺師」にご注意
昭和天皇の御落胤
真っ先に報じたのは「FOCUS」(平成元年3月10日号)だった。「早くも登場『昭和天皇の後落胤』――『大喪の礼』後に融資というサギの筋書き」のタイトルで、その手口を紹介している。記事は福島県で建設業を営む社長のもとに、88年10月に知人を介して現れた松岡という男から持ち込まれた話から始まる。
《「20億円を融資します。これは御上(おかみ)の金で、国のためになる会社や、正直な人に御上の権限で融資され、無利子です。三菱銀行か東京銀行に振り込まれ、そのまま預金すれば利息は1割、この利息2億円を先取りできる。税金や団体への寄付を除き、1億4~5000万円があなたのものになるんです。高松宮が亡くなられた後、天皇の御落胤で皇太子の兄にあたる白嶌(しらとり)誠哉殿下がすべてまかされているのです」》
利息1割というのがまず馬鹿げている、と思う方もいるだろうが、時はバブル真っ盛り、ゼロ金利政策など当時は思いも寄らぬ時代だった。とはいえ、もちろん怪しい、いわゆるM資金詐欺によく似た話であるのだが――。
翌11月、社長のところに松岡は「宮家の出の方」という青木なる人物を連れてくる。「仮契約に100万円の経費が必要だ」といわれ、いささか信じかねる話と思いつつも、一見上品そうな青木の姿や言葉づかいに、2人の旅費を含めて社長は105万円を渡してしまうのだ。
《「本契約は、京都で、直接、白嶌殿下にお会いになれば間違いないことが分かります」と説得され、社長は11月下旬、青木と一緒に京都に向かった。途中、“殿下”の執事と称する男が現れ、「謁見の時は、くれぐれも余計なことはいわないでください。殿下に訊かれたことだけを話してください」》と、次から次へ登場人物が現れる手のこんだ演出がなされ、ついに殿下のお出まし。場所は京都市内のホテル、ツインルームの一室だ。
《執事と称する男が、恭しく、「こちらが殿下です」と社長に紹介。社長は最敬礼し、“殿下”は少し頭を下げた。本契約書なる書類に捺印、印紙代として、現金400万円を渡した。「御上は領収書を発行出来ない」(執事)という説明で、領収書はなし》
ここで正気にかえるかと思えば、とどめを刺すのが白仁王(しろひとおう)を自称する殿下のお言葉。
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