ゲートボール王国「島根県」 “100歳以上が日本一”の最適運動量
「年100日はプレー」
ゲートボールに詳しい防衛大の新井重信教授に聞くと、
「心拍数の変化からゲートボールの運動強度を調査したところ、被験者の最高心拍数を100とした時、プレー中の平均は62・8。日常生活での平均は52・3ですから、大体2割増し程度。健康の維持増進に適度な運動と言えるでしょう」
そのプレー中も、
「一定のリズムでゲームが進むため、急激な心拍数の変動が少ない。つまり、高齢者にとっては脳卒中や心疾患のリスクが少ない、実に安全な競技といえます」
メリットはまだある。本田理事長が続けて、
「『どこに球を打てばいいか』と、チーム内で戦略を話し合いながら進めるので、手足だけでなく頭も駆使する。筋力も維持され、認知症の予防にもなります。長生きされる選手も少なくありません。私が知る100歳で亡くなった女性は、かつて県内最高齢プレーヤーとして98歳まで現役で活躍していました」
折しも県内の出雲ドームは、地区大会の真っ只中であった。参加者で最高齢の86歳、本田博さんに尋ねると、
「20年ほど前から始めました。週に2回、午前中に2時間半の練習を近所の公園でこなします。町内の大会もあるので、年に100日はプレーしていることになるでしょうか。私はグラウンドゴルフもやっているのですが、ゲートボールはルールがよくできているから、勝っても負けても楽しいのです」
自分の足で歩けるのもそのおかげだと言い、
「言い替えれば、ゲートボールができなくなってしまったら、その時が“終わり”だと思っています」
かくも老人を駆り立てる魅力とは──。総合内科医の秋津壽男医師が言う。
「世間との関わり、つまり社会性を保ち続けられる点でも効果は大きいと思います。認知症予防に大切なのは、年をとっても社会的に孤立しないこと。ゲートボールは練習で外出する理由ができるし、ラジオ体操と違って多くの人と話しながらプレーするので、コミュニケーションもとれる。加えて、日光を浴びながらプレーすれば、骨粗鬆症の予防にもなります」
“百寿県”で根強い人気を誇るには、それなりの理由があるというのだ。
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