日本一「100歳以上」が多いのは実はあの県 老人たちが筋骨隆々のワケ

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サルコペニアの率も

 都会の高齢者であれば、自宅と目と鼻の先にあるコンビニで弁当を買い、塩分を多く摂って運動もせずにテレビ三昧、といった光景も珍しくないのだが、

「島根の場合は、不便だからこそ健康的に過ごせるとも言えます。山間部在住で車も使わない人は、いちいち坂道や階段を上り下りしなくてはならず、筋肉も自然とつき、骨も丈夫になります」(同)

 県内の市町村で百寿者率が最も高いのは、山間に位置する邑智(おおち)郡川本町で、実に10万人あたり326・89人。当地で医療の中核をなす加藤病院の加藤節司理事長が言う。

「若い人が少なく、高齢者は自分で草むしりや雪かきをしなければならない。生きていくため主体的に動き続けられる環境が整っているのです。また農作業や害獣対策など、全員参加型の濃密なコミュニティーが残っており、挨拶もはきはきと声を掛け合うのが当たり前。社会とのつながりのなさは、肥満体という健康リスクの3倍も寿命に影響するとの研究結果もあります」

 実際に高齢者と日々接している、雲南市立病院の大谷順院長に聞くと、

「診察の時、お年寄りの身体を見て驚きます。男性も女性も、70歳80歳を過ぎて筋骨隆々の方がおられます。その多くが農業や林業に携わっていた方でした。そうした職業には定年もなく、体が動く限りは働くという人が多いので、筋肉の維持には有利だと思います」

 それを裏付けるようなデータがある。

「2年前に、65歳以上の市民およそ9000人の栄養調査を行いました。回答者の平均年齢は76・6歳で、身長や体重とともにふくらはぎの周囲を計測、さらに過去3カ月の食欲不振やストレスなどを尋ねました。その結果、一般に65歳以上の20%はサルコペニア(加齢性筋肉減少症)とされるのに、該当者はわずか5%弱だったのです。つまり日常生活の中で自然に“筋トレ”ができていたということです」(同)

 やはり最後は筋肉なのだ。

週刊新潮 2017年11月30日号掲載

特集「知られざる『百寿者』天国! 5年連続『100歳以上』が日本一多い『島根県』の秘密」より

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