「百寿者」目標なら歯が命! プロの「歯磨き」技、家庭で実践可能な“秘密兵器”
家庭の工夫とプロの技
かくも悪辣な病と、いかに対峙すべきか。絶対的因子である「菌」退治が最優先であるのは自明の理。日常の歯磨きについて、神奈川歯科大学の山本龍生教授が言う。
「磨き方はおもに2種類あります。歯周ポケットに毛先が入り込みやすいよう45度にあてるバス法、そして90度にあてるスクラビング法です。いずれも歯茎の上皮細胞を刺激するので新陳代謝が盛んになり、新しい細胞が作られて上皮を押し上げていく。これによって出血がなくなり、結果として血液の鉄分で増える歯周病菌の働きを弱めることになります」
最近はテレビCMの影響などで、ポケットから直接プラークを掻き出すバス法が正しいと考える人が増えたというのだが、
「歯周ポケットに毛先を入れなくても、歯ブラシを歯と歯茎の境目にあて、約200グラムの力で1カ所につきおよそ10秒間振動させると、ポケット内の細菌は自然と減少します。バス法で歯周ポケットの中を強く磨くと、歯茎を傷つけてしまうおそれがあります。2つの方法でも届かない歯間は、毛先を突っ込めるつまようじ法歯ブラシやデンタルフロス、また奥歯の裏にはワンタフトブラシも効果的です」(同)
もっとも鶴見大学歯学部の花田信弘教授は、
「完璧な歯磨きは非常に難しく、頑張っても1割ほどは必ず磨き残しとなってしまいます」
とのことで“プロの技”を提唱する。
「まず歯科衛生士などによる『PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)』という歯垢の機械的清掃を受け、バイオフィルムを除去します。次に、口腔内細菌を化学的に除去する『3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム)』。唾液のある口内では薬を留めるのが難しいので、歯型を取ってトレーを作り、内部に抗菌剤を塗って歯にはめるのです。これで虫歯菌と歯周病菌を殺菌します」
いったん歯型を作れば、3DSは家庭でも可能だ。
「予防的に行う場合は1日1回、寝る前に5分間。また、すでに口腔内に疾患がある人は朝晩それぞれ5分ずつ行いましょう。最後はトレー内にフッ素製剤を入れて歯に塗布するのですが、これは研磨剤の入っていない歯磨き剤でも代用できます」(同)
現在3DSを受診できる歯科医院は全国に300ほどあり、おおよその費用は歯型作りなどを合わせて10万円前後だという。
唾液の分泌が止まる就寝中にもできることはある。手軽な“秘密兵器”を披露するのは、ライオン株式会社オーラルケアマイスターの太田博崇氏だ。
「これからのケアとして提案しているのが、昨年9月に発売された『システマハグキプラス ナイトケアジェル』です。お休み前に歯ブラシに1センチほど塗って歯全体を軽くブラッシングし、一度だけすすぎます。これで翌朝まで薬用成分が残り、寝ている間に歯茎の抵抗力を高めることができます」
先の花田教授が言う。
「現在10歳の子たちの半数は、107歳まで生きるという試算があります。ですが、百寿が当たり前となっても健康寿命が伴わなければ意味がありません」
そのためにも“見えない敵”を駆除せねばならないのだ。
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