口内だけじゃない「歯」のトラブル… 歯周病菌が「認知症」「大腸がん」を招く!?
暴威をふるう歯周病菌
さらに、国立長寿医療研究センター口腔疾患研究部の松下健二部長が言うには、
「歯がある人は、余命に関して明らかに統計学的な優位性がみられます。福岡県の65歳以上の住民656人を対象に死亡率との関係を調べたデータでは、1本失うごとに死亡リスクが0・018倍ずつ上昇することが分かっています。20本以上残っている人を1とした場合、10〜19本の人は1・36倍となり、1〜9本では1・54倍。さらに、1本も歯がない人のリスクは1・66倍にもなるのです」
永久歯を失う二大要因は、言うまでもなく虫歯と歯周病。とりわけ後者は厄介だ。
「そのリスクを高めるとされる歯周病原菌は、口腔内に800種類ほどあります。特に関連が深いのは『レッドコンプレックス』と呼ばれる3種。いずれも酸素のある場所では活動できない嫌気性菌で、歯と歯茎の間の歯周ポケットが深くなると、空気の届かない奥の方の歯垢(プラーク)で増殖する。これらが歯周病を引き起こすのです」(松下部長)
ゆめゆめ歯を失うだけの病気と軽んじてはならない。
「2013年の英国の研究チームの報告によれば、アルツハイマー型認知症で亡くなった10人の患者を調べたところ、4人の脳から歯周病菌が見つかったといいます。歯茎から出血し、口腔内の菌が破れた血管から全身に流れていく。これを菌血症といい、そのうち菌は血管内部で暴れ出す。実際に、心筋梗塞を起こした人の冠動脈からはレッドコンプレックスの一種が検出されています」(同)
鶴見大学歯学部の花田信弘教授も、こう言うのだ。
「心内膜炎の患者の心臓から口腔内細菌が検出されたケースもあります。歯周ポケットに溜まる細菌の数は億単位にのぼり、血管に侵入するとわずか90秒以内に全身にばら撒かれていく。細菌が壁に付着することで血管は腫れ、虚血性疾患を引き起こします。脳で起きれば脳血管が詰まり(脳梗塞)、まだらボケなどを発症することもあります」
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