口内だけじゃない「歯」のトラブル… 歯周病菌が「認知症」「大腸がん」を招く!?
「百寿者」目標なら歯が命! 最強「デンタル・ドック」のすゝめ(上)
永久歯の喪失や歯周病など、歯のトラブルはとかく口内の問題として片付けられがちである。が、これらを放置すれば、禍(わざわい)は全身に及んで取り返しのつかない事態を招くことに――。
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成人の永久歯は28本、親知らずを含めれば32本である。80歳の時点で自前の歯を20本残そうという「8020運動」は、1989年から厚労省や日本歯科医師会によって推進されてきた。深井保健科学研究所所長で前「8020推進財団」専務理事の深井穫博氏が言う。
「10月中旬に『歯科疾患実態調査』最新版の詳細が公表されました。それによると、8020の達成者は5年前の前回40・2%から大きく増加。51・2%と、初めて5割を超えました」
運動開始当初、達成者はわずか7%に過ぎなかったというから、口腔ケアの重要性が広まった成果と言えよう。そもそも歯を失うと、
「生活習慣、とりわけ食生活が変化してしまいます。固い食べ物を避け、野菜や肉の代わりに麺類やおかゆといった食べやすい炭水化物に偏っていく。食事の多様性と栄養バランスが崩れ、糖尿病や動脈硬化など、さまざまな生活習慣病のリスクも増加します。十分に噛めないと、高齢者は低栄養状態に陥って筋力が低下しがちとなり、転倒やサルコぺニア(加齢性筋肉減少症)のおそれもある。実際に要介護になる要因の1位は脳血管疾患ですが、以下認知症、高齢による筋力低下や転倒による骨折と続くのです」(同)
一方で、神奈川歯科大学の山本龍生教授によれば、
「愛知県の知多半島で65歳以上の住民4425人を対象に4年間追跡調査したところ、歯が20本以上ある人に比べ、歯がほとんどなく義歯も未使用の人は、認知症の発症リスクが1・85倍になることが分かりました。また過去1年に全く転倒したことのない65歳以上1763人を対象として、3年後に過去1年間で2回以上転んだかという調査を行ったところ、20歯以上の人に比べ、19歯以下で義歯も使用しない人は転倒リスクが2・5倍になるとのデータも得られたのです」
なぜ転ぶのか。
「歯は体の骨格の一部であり、それを失うことは骨格を欠損するのと同じです」
そう指摘するのは、東京かみ合わせ治療研究所の安部井寿人所長だ。
「人体は一番上に重い頭部が位置し、重心が高くバランスが取りづらい形で二足歩行している。頭部のバランスを司る神経は、下顎骨の運動に関わる咀嚼筋から脳へと延びており、歯を失うことで咀嚼筋からの神経伝達が減ります。すると下顎の位置が不安定になり、転倒しやすくなるのです」
歯を噛み合わせた時の刺激は、歯根の周りを取り巻く歯根膜から脳に伝わり、脳の活性化を促すという。咀嚼がままならなければ、あわせて認知症の危険も高まるわけだ。
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