女性プロデューサーがタブーに斬り込んだ「石つぶて」ドラマ化の波紋
タブーに切り込んだ「石つぶて」ドラマ化の波紋――清武英利(下)
現在WOWOWで放送中の『連続ドラマW 石つぶて〜外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち〜』(日曜22時)は、清武英利氏のノンフィクションを原作に、2001年に露見した外務省機密費詐取事件を描いた作品である。外務省と総理官邸の闇を突いたこの事件は、機密費を詐取していた元要人外国訪問支援室長の松尾克俊が逮捕されたほか、外務省をはじめとする735人の関係者が聴取される大掛かりな疑惑に発展。警視庁刑事部捜査二課の刑事たちの共通体験となっている。
「石つぶて」のドラマ化は二課OBが集まる親睦会でも話題となったが、作中にて実名で登場する4人のうち、出席したのは鈴木敏主任のみ。それまでは会に毎年のように顔を出していた中才(なかさい)宗義情報係主任と情報係長の中島政司、そして事件を総括した第四知能犯第三係長の萩生田勝の姿はなかった。
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警部で警視庁を勇退した山口勇孝(70)は、それを残念だと思った。
――情報係の彼らこそ胸を張って来るべきなのに。二課の名を大いに上げたんだから。
二課OBの間には、本やドラマで取り上げられた中才ら4人に対するやっかみと嫉妬が潜んでいる。「ええ恰好をするんじゃないよ」「退職後も秘密は洩らさない黒子であるべきだ」という者もいる。二課というところは、退職しても「余計なことはしゃべるな」という同調圧力が強く働く世界だ。捜二OB会自体も無言の圧力となっている。
だが、山口は、「いまさら何が秘密だ」と考えている。彼は巡査部長時代に二課第四知能犯で7年間、贈収賄事件の捜査を担当した。3年前に大腸がんを発症し闘病した後、吹っ切れたように、物事を単純明快に考えるようになった。
二次会の席で、出版やドラマ化に否定的な声が出ると、彼は唐突に、このドラマの監修を引き受けたことを明かした。
「えーっ」「どうして?」というどよめきが起きた。映画・放送業界には、警視庁刑事部出身者たちを集めた警察ドラマ監修会社がある。映画監督の五社英雄が創立した「五社プロダクション」がその代表格だが、同社も捜査一課や三課(盗犯)、鑑識OBが中心で、二課刑事が力を貸すという話など聞いたことがなかったからである。
山口はこう言ったという。
「中才氏たちはいい仕事をしましたよ。外務省や官邸がからむ、大変な事案を摘発した。二課はすごいぞ、特捜部じゃなくても(聖域を)やれるんだ、とPRしてもいいんじゃないですか。漫画チックじゃなくて、皆さんが真剣に『オー』というドラマになるように、僕はお手伝いしてるんです」
しかし、あの二人が訪ねてこなかったら、山口が監修を引き受けることはなかっただろう。
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