張りぼてディーン・女工哀史武井をはじめダメダメドラマ「今からあなたを脅迫します」(TVふうーん録)

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 最近、女性誌の表紙を見てたまげることが多い。「え、なんでこんな写真を表紙に使う?! 編集者が老眼?」と訝(いぶか)しく思うほどピントがボケているのだ。でも、こういうのが流行りのようで、こぞって女性誌がピンボケ。誰が写ってんのかわかんねーくらいピンボケ。よく言えば「ニュアンスのある」写真なのだろうけれど、流行りだからって、プロがピンボケで納得していいの? 

 そもそもくっきりハッキリするどころか、修整技術の向上で肌質も毛穴も別人級に操作しまくっていた写真が、急にぼんやりピンボケ写真になると気になるし、気持ち悪い。なんでこんな話を入れるか、もうお気づきですよね。興味のないドラマを取り上げるからです。

「今からあなたを脅迫します」が、なかなかにひどい。主演のディーン・フジオカは今までのドラマで、クールな探偵や洋行帰りの金持ち、ドSの眼鏡男子、冷静沈着で寡黙な執事などを演じてきたわけだが、ここにきて「棒」であることが露呈しちゃったのだ。

 薄々感づいていた女性たちも少なくない。ただ、綺羅星の如く現れたおディーン様に胸ときめいて、フィルターかけちゃったんだよね。「どうやら、というか確実に棒っぽいんだが、カッコイイから黙っておこう。シーッ」と。これ、私の本心である。ま、いずれバレることだし、「サタデーステーション」(テレ朝)の歌声にモヤモヤしていたところだし。「歌わないほうがいい俳優陣」に名を連ねちゃったよなぁ、藤木直人と反町隆史に並んで(反町はしゃべらないほうがいいという但し書きもつく)。

 というか、ディーンうんぬんの前に、内容がひどい。金持ちお嬢様の武井咲を巻き込んで詐欺紛いの生業。突飛で一瞬面白そうな設定も、描き方によってこんな陳腐になるのか。かつてのディーンの神々(こうごう)しさは消失、すべるギャグ、むしろルー大柴に近づいた残念感。

 武井に関しては、複雑な気持ちだ。「妊娠で強行突破しないと結婚できない、妊娠しても降板できない」という、女工哀史レベルで働く女性の人権問題を実際に抱えているヒロインをどう観たらいいのか。

 一方で、彼女が主演級を長期やってこられたのも巨大事務所のお陰である。演技力があっても主演級に呼ばれない女優が星の数いるのだから、贅沢な話でもある。権利と責任を話し合おうよと思うし、ゴムつけようよと思う。相手もな。

 つうか、日テレは朝から晩までジャニーズがいない時間帯がないくらい、いまやジャニーズ御用達(ごようたし)局だ。でもこのドラマは他の大手事務所接待枠としてご用意したはずが、まさかの駄作。今期は各局が秀作揃いなだけに、否応なしの悪目立ち。

 で、冒頭の話につなげる。このドラマの映像が微細に揺れているというか、ハンディっぽい感覚がある。躍動感ではなく不安定。新奇性ではなく素人臭さ。あれは狙いなのか。だとしたら外してる。気のせいかな。見せるべきところは固定でお願いします。あ、見せるべきところがないのかな? 文句ばかりで疲れちゃった。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2017年11月16日号掲載

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