座間「首吊り士」を生んだ「別居父母」の胸中
暗い人生だった
ところが、だ。
「10年ほど前、隆浩クンが高校生の頃だと思いますが」
とは、白石家と親しい、別の近所の住民である。
「奥さんが妹さんだけを連れて、家を出てしまったんです。“離婚したの?”とお父さんに聞いてみたら、“違いますよ”“娘が遠くの学校に通うようになりましてね。心配なので、母親も付いていくことになりました”と。でも娘さんはもう大人なのに、奥さんはまだ帰ってきませんね」
この“疑念”は正しく、後に白石容疑者は、前項の「死に神から逃れた」介護士にこう言っている。
「両親が離婚した。それからずっと暗い人生だった」
また、知人女性によれば、
「よく“昔、親が離婚してさ、苦労したんだよね”とこぼしていましたよ」
母から捨てられた“傷”の深さを物語っているのだ。
現在、その母と妹は、座間市から車で50分ほどの、川崎市内のアパートで暮らしている。姓は「白石」のまま。今後、その名は重過ぎる「十字架」となって、父母、何よりまだ24歳の妹に圧し掛かる……。
部屋のインターホンを鳴らしたが応答はなし。また、父も実家から姿をくらましたままだ。
代わって、
「事件後、弟への連絡を控えているけどね」
とその胸中を慮るのは、県内に住む、白石容疑者の父の実兄、つまり容疑者の伯父だ。
「今は精神的に参っていると思うけど、やっぱり親だよ。申し訳ないと思っているだろ。いずれケリが付いたら、表に出てきて謝罪するんじゃないか。そうすべきだよ。それが親だよ。息子のこと、あんなに可愛がっていたんだから……」
親族による、極めて重い言葉である。
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