乙女の心をくすぐる? 平日でも90分待ちの上野「怖い絵」展

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 上野は西郷隆盛像のほど近く、JRの山下口から階段を上ると、そこには長蛇の列。若い女性が目立つ。列の先には、目隠しをされ戸惑う金髪の女性が描かれた、何やら怪しげな西洋絵画の看板が……。

 上野の森美術館で12月17日まで公開の「怖い絵展」である。平日でも90分待ちは当たり前。休日ともなれば、2時間以上も並ぶことになる。

 この「怖い絵展」、一般的な絵画展とは少々趣を異にする。作家別、あるいは印象派などジャンル区分をテーマにしたものではなく、ドイツ文学者の中野京子さんのベストセラー『怖い絵』からヒントを得て、背景に怖さを感じるもの、史実や神話などのモチーフから恐怖を読み取れる作品、約80点を集めた企画展なのだ。

 教科書に載るような有名どころの作品はほとんどないが、代りにうら若き英国女王が斬首前に戸惑う様子を生々しく描いた「レディ・ジェーン・グレイの処刑」など、一度観たら忘れられない印象的なものばかり。

 東京に先んじた兵庫県立美術館では、7月からの3カ月間で27万人を動員。開館以来、歴代入場者数3位の数字となった。

「20〜30代の女性が7割方を占めるでしょうか。男性はたいてい女性に連れられてといった感じです。不思議と高齢の方はあまり見かけませんね。年配の人たちは、きっとお隣、東博で行われている『運慶』展の方に行かれているのかもしれません」(会場関係者)

 怖いけれども観てみたい――どうやらそれが若い女性の心をくすぐるらしい。

 また「怖い絵展」、もう一つ面白い特徴があるという。

「通常なら会場内で混み合うのは作品の前。でも今回は脇にある特別監修の中野さんが書いた解説文に、皆さん群がっています。珍しい光景ですね」(同)

 実際に会場の声を聞いてみると、「え、やだー、この人、首斬られちゃうのー」「ホラー映画はムリだけど、絵なら大丈夫かも」「何が怖いのかが分れば、知識がなくても面白く観られるのがいいよね」……。

 来月は動物園で新生パンダの公開も。木枯し吹くけどアツい、上野の森である。

週刊新潮 2017年11月16日号掲載

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