出光創業家が頼りにする大株主「出光美術館」の重大法令違反

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 せわしなくビジネスマンが行き交う東京・丸の内は、劇場や美術館など文化の香りがする街でもある。その一角にある「出光美術館」も、丸の内の名所だ。設立したのはご存じ、出光興産の創業者・出光佐三である。ところが、この「名所」が今や石油業界再編の命運を握っているというのだ。

 皇族も度々訪れる出光美術館は、国宝をはじめ約1万件のコレクションを擁しており、我が国でも指折りの私設ミュージアムといっていい。最近も「江戸の琳派」をテーマに展覧会を開いており、家族連れなどで連日賑わいを見せている。

 その出光美術館が、出光興産の大株主としてスポットライトを浴びたのが2年前のこと。

「出光興産が昭和シェル石油との経営統合を発表するのですが、出光昭介名誉会長を中心とする創業家がこれに反対を表明するのです。理由として、昭和シェルが外資系であること、同社に先鋭的な労働組合があることなどを指摘しましたが、実際には経営統合によって33・92%あった持ち株比率が減ってしまうことを懸念したからと言われています。そのうちの5%を握るのが出光美術館でした」(経済紙記者)

 だが、石油業界は人口減少などの影響で5〜10年のうちに需要が3割も減るという予測さえある。そのため同業他社は急いで再編を進めてきたのだが、業界2位の出光興産は創業家の反対で身動きが取れない状態にあった。

 その膠着状態に変化が見られたのは、今年7月のことだ。

「会社側が大規模な公募増資に踏み切り、創業家の持ち株比率が約26%まで低下したのです。創業家は増資差し止めの裁判まで起こしましたが、認められなかった。しかし、今なお合併反対の姿勢は崩しておらず、経営統合できるかどうかは予断を許しません。とりわけ出光興産にとって悩ましいのが、創業家側に立つ出光文化福祉財団(7・75%保有)と出光美術館という2つの財団なのです」(同)

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