TOKIO松岡、若嶋津を危険に晒した「サウナ健康法」の正しい活用術
死を招く「ヒートショック」
現役引退から30年。当時の体重125キロは相応に絞られたとはいえ、190センチ近い体躯は往時のまま。そんな偉丈夫を死の淵へと向かわせた“元凶”について、新渡戸文化短期大学の中原英臣名誉学長が解説する。
「今回は、明らかに寒い日に起きた出来事です。温かい布団から起きて寒いトイレに向かう、あるいは風呂やサウナから出て冷気に触れるなど、温度差の激しい場所に移動した時の『ヒートショック』は大変危険なのです。冬場など、血管が収縮して血圧が急上昇し、脳出血が起こりやすくなります」
このケアを怠れば命取りになるといい、米山医院の米山公啓院長は次のように警鐘を鳴らす。
「サウナの愛好家は水風呂との間を何度も往復し、外気や体温を変化させることで自律神経を訓練し、結果的に体を鍛えると言いますが、これはあくまで健康体で若いことが前提。ただでさえサウナは脱水症状を起こしやすく、いきおい脳梗塞のリスクも高まります。二所ノ関親方は糖尿病の既往症があるとも報じられており、さらに60歳という年を考えれば、毎日サウナに入ってヒートショックに晒されるというのは一種の自殺行為だといえます」
やみくもに入浴すれば死を招くことになるのだ。
循環器専門医の池谷敏郎氏は、
「サウナは正しく楽しむ分にはリフレッシュ効果があってよいのですが、誤った方法だと非常に危険です」
そう前置きしつつ、
「体温が上がると、血管は表面積を大きくして熱を逃がすため拡張します。当然血圧は下がりますが、汗を多く出すことで血管内の血液量も減ってしまう。その時、最も影響が出るのは頭部です。キリンの血圧が約250もあるのは、高い位置にある脳に血を運ぶのに必要だからです。血圧低下や血液量減少となれば、脳に十分な血液が回らないという事態になりかねません」
脳梗塞のリスクとあわせて恐ろしいのが、脱水症状である。
「盲点となりやすいのは、塩分の不足です。汗をかくとミネラルなど体内の電解質が不足しますが、これは水だけでは補給できません。経口補水液で電解質を取り込んだり、塩を摂るべきなのです」
例えばゴルフ場のサウナでも、
「プレーで汗をかいた後に水分や塩分を十分に摂らないまま入るのは危険です。脱水症状の確かめ方は、まず排尿の回数が普段より減っていないかどうか、そして尿の色が濃ければその疑いがあります。風呂場に置いてある体重計では、出た後にどれだけ減ったかを測るのでなく、入る前に普段より体重が減っていないかを確かめる方が、脱水症状を防ぐ上では重要なのです」
万が一、不測の事態に見舞われた場合は、
「脳挫傷は頭が1・5メートル以上の高さから落ちることで生じるとされています。浴場などで突然クラッときたら、直ちにしゃがむことが大事です。相撲でいう『蹲踞(そんきょ)』の姿勢を取れば足の血管が収縮してその分、心臓や脳に血液が流れ、転倒の危険がぐっと減りますし、もし倒れても頭が低い位置にあるので脳挫傷を防ぐことにつながります」
とっさの身のこなしが明暗を分けるというのだ。
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