母子家庭球児が「恩返し」の大量プロ入り プロ野球ドラフトの人間ドラマ

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“平成版巨人の星”

 日ハム3位の田中瑛斗(18)=投手・柳ヶ浦高=の場合、父親が野球指導にのめり込むあまり、母親との関係が悪化してしまった。まさに、“平成版巨人の星”である。

 地元メディア記者の話。

「父親の精一さんは息子が小3で野球を始めると、“プロ野球選手にさせる”と思い立ち、勤めていた建設会社を辞め、給料半減でも自宅近くの建設会社に転職しました。イチローパパの鈴木宣之さんの書いた本に感化され、早朝から深夜まで熱血指導するためです。ほぼ野球経験がなかったため、指導法はDVDや本などからの独学でした。その甲斐があったわけですが、教育方針で対立した奥さんとは別居したままだそうです」

 逆に、父親から野球を反対されていたのは、DeNA2位の神里和毅(23)=外野手・日本生命=である。

 父親の昌二さんが明かす。

「私自身、甲子園に4回出場した高校球児でした。社会人でもプレーを続けましたが、能力のある人との差を痛感した。息子にはそんな思いをしてほしくありませんでした。だから、テレビでプロ野球中継が始まればチャンネルを変えるし、意識的に野球を遠ざけていた。ただ、家内からも聞いて、息子が野球をやりたいというのは知っていました」

 小4の夏に息子は直接、“野球をやりたい”と告げたという。

「仕方なく許しましたけど、左打者になれと条件をつけた。足が速いのは知っていましたから。その後も野球を教えることはなかったのですが、強豪の糸満高校に入ってからはトコトン付き合おうと考え直しました。部活で遅くに帰宅しても、素振りやトスバッティングをさせた。息子がプロ野球選手になれたのは嬉しい反面、後悔もある。もし幼稚園のころから見てあげていたら、もっと早くプロ野球選手になれたかもしれないなと思ってしまいます」(同)

“巨人の星”家庭の出身者は、他にもいる。オリックスのドラ1、社会人ナンバーワン左腕の田嶋大樹(21)=投手・JR東日本=も父親に鍛えられたという。

「佐野日大高の寮に入るまで、夕食後は自宅前の駐車場にある自動販売機の明かりを頼りに、父親の秀則さんからシャドーピッチングや素振りのコーチを受けていたそうです。社会人になってからも自宅に戻ると、登板した試合のDVDを一緒に観て、アドバイスを受けている。秀則さんも栃木の県立高校で甲子園を目指していたことがあり、その熱血指導があったからこそ、社会人ナンバーワン左腕が誕生したわけです」(前出・全国紙アマチュア野球担当者)

週刊新潮 2017年11月9日神帰月増大号掲載

特集「歓喜とため息の『ドラフト』人間ドラマ 母子家庭球児が『恩返し』の大量プロ入り! 『清宮』が唯一事前に面談しなかった『日ハム』裏事情」より

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