供養よりビジネス優先――名刹「ビル型納骨堂」で起きていた解任トラブル
永代供養に落とし穴「120億円」納骨堂ビジネスの破綻――伊藤博敏(下)
東京都港区の龍生院は、高野山金剛峯寺(和歌山県)を総本山とする真言宗の名刹である。ここに5階建ての「三田霊廟」を呼ばれる納骨堂が建てられたのは2014年のこと。近年、都心部で建設が相次いでいるビル型納骨堂だ。1基120万円の永代使用料と1万5000円の年間護持会費で1万基の販売を目論んだビジネスで、建設を推進したのは龍生院の高木好秀住職の娘・あぐり氏と結婚した好正氏(60)だった。好正氏の長男も龍生院の僧侶となり、秀芳と名乗った。
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ところが、この計画はわずか3年で暗転してしまう。資金不足により借金塗(まみ)れとなり、また元暴力団幹部であった好正氏の経歴が、事業化の行く手を阻んだ。
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一歩前に進むのは、12年6月、旧知の会社経営者が責任役員兼檀家総代となって納骨堂に本気で取り組むようになり、都内の金融会社が運営する投資事業組合から25億円の融資を得てからだ。ここで建築プロジェクトチームが編成された。龍生院が秀芳氏、納骨堂販売が檀家総代、ゼネコンは藤木工務店、納骨搬送機システムは豊田自動織機が担った。
しかし本当の苦労はここから始まった。
25億円拠出の投資事業組合は、あくまで建設資金捻出のつなぎ融資であり、檀家総代らは販売計画を抱えて東奔西走、本格的に事業支援してくれる金融機関を見つけなければならなかった。一般の金融機関が相手にしてくれないのは同じ。だが、努力は実り、タイヘイが建設・販売資金を融資することになった。
タイヘイとは、弁当配達で知られる社員数2400名の大手である。金融業のイメージはないが、不動産担保融資では際どい業者にも貸し付けることで知られていた。その分、金利は高かった。好正氏はそれを承知で、14年8月、龍生院とタイヘイとの間で、金銭消費貸借契約を結んだ。転落は、ここから始まっていたのかも知れない。なにしろ借りた金額が大きく、しかも金利が高かった。
ゼロから計画を立ち上げた好正氏は、建設までに各方面に働きかけており、その分経費は嵩(かさ)み、それが借り入れ増加につながって、タイヘイからの借入金額は56億9000万円、金利は7・8%である。利払いだけで年間約4億4000万円。120万円の納骨堂を367基(月間約30基)売って、ようやく金利が賄える。利払いに運営費を上乗せすると毎月50基がノルマとなり、至難の業だった。
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