患者に寄り添い、若手を育てる! サクラの信念実った「コウノドリ」第4話
医療現場における深刻な人手不足
今回は、今橋貴之(大森南朋)が他の病院を回り、ペルソナ(サクラが勤める総合医療センター)の人員増強に奔走する場面が繰り返し描かれた。現場の人手不足による、医師の疲弊は深刻だ。
私の父は医師で、大学病院に長く勤めていた。私が子どもの頃は家にほとんど帰ってこられず、帰宅しても緊急の呼び出しを受け、深夜に飛び出していくこともしょっちゅうだった。父は若手時代、いつも病院の廊下(!)で死体のように転がり仮眠を取っていたという。2歳下の私の妹に至っては、父があまりに帰ってこないので父をなかなか認識せず、預け先の祖母にしがみついて離れないこともよくあった。今となっては笑い話だが、医療現場の過酷さと慢性的な人手不足は現代においてますます苛烈を極めている。今橋が、娘の誕生日に帰宅できずやりきれない表情を見せるシーンは、他人事と思えず胸が詰まった。
先週新生児科に搬送されてきた倉崎恵美(松本若菜)は、サクラや四宮たちの後輩産科医であったことが明かされた。出産後、本当はすぐに職場復帰することを望んでいたと倉崎は四宮に話す。離婚してひとりで子育てすることになった倉崎をやけに心配している四宮が気になるが、ここで厚生労働省の平成24年調査を見てみよう。調査によれば、全医師における女性医師の割合は、60歳代で9.7%、40歳代で20.4%だが、20代の医師では35.5%を占めるようになっている。しかし多くの女性医師が、倉崎と同様に、出産育児を機にキャリアを中断せざるをえない。
慢性的な人手不足の中で、定時の17時に帰る研修医の赤西吾郎(宮沢氷魚)に、イライラを募らせていく下屋加江(松岡茉優)の気持ちもわからないことはない。だが「言ってくれれば残りますけど」と言っている赤西に「もういい、お疲れさま」と会話をシャットアウトしてしまう様子は、先輩としていただけない。
そんな中、サクラが赤西の成長をあざやかにサポートする名場面が訪れた。秋野の帝王切開手術にあたり、サクラは赤西を「前立ち」に指名する。前立ちとは第1助手のことで、術者の「前に立つ」ことからそう呼ばれる。手術の内容をすべて理解していなければならない、非常に重要なポジションである。赤西は、産科医である親の後継を否定していたが、前立ちを経験させることでサクラは赤西に、自分で考える機会を与えたのだった。
ことあるごとにきつく当たっていた下屋が「北風」式なら、サクラは「太陽」のように赤西を照らして応援し、育成に大きく貢献した。はかなげな笑顔がサクラのトレードマークだが、この時のサクラの表情はかつてないほど慈愛に満ち、神々しくさえあった。赤西が産科で学んだことは大きいだろう。彼が将来どのように患者に寄り添うことになるのか、希望を持って応援したい。
最後まで四宮は赤西を「ジュニアくん」と呼び、冷たい態度を崩さなかったが、新生児科に移る赤西を見送ったあと「よっ、初代ジュニアくん」とサクラに声をかけられ、不満そうに鼻を鳴らすラストは心和む一幕だった。……仲良しじゃないか!!(すみません、取り乱しました)
労務環境改善、女性の職場復帰サポートなどは、医師でない人や子どもを持たない人にも、切実なテーマだろう。「コウノドリ」が、今後、産科の風景からどこまで現代社会に切り込めるか、大いに期待したい。
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