永代供養に落とし穴 高野山の名刹「120億円」納骨堂ビジネスの破綻
永代供養に落とし穴「120億円」納骨堂ビジネスの破綻――伊藤博敏(上)
その簡便さから近年、特に都市部で建設が相次いでいるビル型納骨堂。心静かに先祖を供養する場所で、煩悩丸出しのマネーゲームが繰り広げられていたとしたら――。都心一等地にある高野山の名刹を舞台にした騒動を、ジャーナリストの伊藤博敏氏がレポートする。
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永代供養のビジネス化、その象徴が「お墓のマンション」といわれる納骨堂だろう。参拝スペースを訪れ、専用カードをかざすと、〇〇家と書かれた納骨箱が自動搬送されてくる。花が飾られ焼香の準備も整えられており、「手軽な供養」が可能。しかも1基あたりの永代供養料は都心でも100万円前後である。300万円を超える墓地購入費用と比較すると安価なため、納骨堂が急増しているのだ。
供養する側のメリットは明らかだが、納骨堂を運営する寺院サイドの収支はどうなっているのか。
東京都港区の龍生院を例に取ろう。桜田通りに面した、慶応大学三田キャンパス東門の近くにあり、高野山金剛峯寺(和歌山県)を総本山とする真言宗の名刹。かつてここには、その歴史に相応しい風格のある平屋の本堂が建っていたが、今は取り壊されて5階建ての「三田霊廟」と呼ばれる納骨堂になっており、龍生院の本堂はそのなかにある。
慶応大に隣接する環境の良さと、都営地下鉄三田駅、JR田町駅から徒歩7分前後というアクセスの良さが“売り”で、龍生院は1基120万円の永代使用料と1万5000円の年間護持会費で1万基を販売するという強気の販売戦略を立てていた。単純計算で120億円のビッグビジネスだ。
本堂を取り壊し、2013年2月、地鎮祭が行われて翌年に完成した。市松模様の白壁に重厚な門構え。自動ドアを入るとエントランスの床は大理石。梁や柱に旧本堂の建材をそのまま使った本堂は、新しさのなかにも歴史を感じさせた。完成直後、私は納骨堂を訪れている。その建設を推進したのは高木好正氏(60)で、氏との関係は後述するが、好正氏は旧知の私を案内しながら、「よくここまでやってこられた。自分でも感心します」と、感慨を隠さなかった。
だが、それからわずか3年で暗転する。
このプロジェクトを推進した好正氏は、元々は龍生院とは関係がなく、代表役員の高木好秀住職の娘と結婚した後、僧籍を取得した。しかし、今年5月22日、好正氏は副住職で長男の秀芳氏ともども、好秀住職によって、責任役員を解任された。同時に、三田霊廟の販売会社、納骨堂建設費用などを貸し付けていた金融会社、及び両者と業務委託契約などを結んだ好秀住職によって、2人は龍生院・三田霊廟への出入りを禁止された。
まさに天国と地獄。売り出し当初は、「都心一等地の納骨堂」ということで人気が高く滑り出しは上々だった。好正氏が振り返る。
「墓地は駅から遠く坂が多いのが大半ですが、ここなら駅から歩いて来られる。購入して頂いた方に、『いつでも供養できるし、お寺なんで、安心してご先祖を預けられます』と、感謝され、こちらが逆に恐縮することもありました」
暗転の原因は、当初予定の「月間50基」という販売計画が、達成されなかったからだ。もともと「無謀」といっていい計画だが、そこにはやむにやまれぬ事情があった。
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