団塊世代はホロリと「キンダーブック」90年展

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「懐かしいなあ『キンダーブック』……戦争中、疎開先での愛読書だったよ。東京から祖父母が送ってくれた雑誌で、宝物でした」

 と目を細めるのは、評論家の藤野健一さん(77)。

「キンダーブックの90年」と題した展覧会が、10月21日に始まった。台風の風雨をものともしない熱心なファンが駆けつけた(来年1月14日まで。印刷博物館)。

「出版社に就職して、小説誌を編集したときも“お手本”になった気がします。僕らの世代は、皆、熱心な愛読者だったもの」(同)

「観察絵本キンダーブック」は、フレーベル館が1927(昭和2)年に創刊し、90年の長きにわたり刊行してきた老舗絵本雑誌である。

「幼稚園に毎月、定期的に売りに来ていました。訪問販売の走りでもある」(同)

 印刷博物館広報担当者が言う。

「企画は2~3年前から温めてきました。キンダーブック創刊90年と出版元のフレーベル館創立110年に鑑みて、この雑誌で“昭和史”を表現できないか、と考えたのです」

 たしかに、「キンダーブック」は、時代の影響を色濃く受けてきた。

「表紙を見れば一目瞭然。新幹線が通れば“とうかいどう しんかんせん”を特集に据えて、表紙はその絵が飾っています。テレビの茶の間への登場、ロケットの打ち上げ、どれもこれも最新のトピックス」(同)

 挿絵の表現に見る変遷も見逃せない。

「童話作家のあまんきみこが執筆、いわさきちひろ、吉澤廉三郎、武井武雄など、当代一流の画家が挿絵を描いてきました。その原画や、時代と共に移り変わる印刷表現も紹介します」(同)

 団塊世代以上がホロリとする“あの頃の日本”が追体験できる。入場者数は1万人超えを目指す。

週刊新潮 2017年11月2日号掲載

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