“痩身医”や美術品修復… 世界40カ国の北朝鮮「出稼ぎ労働者」は日本人と誤解!?
イタリアに美術品修復士まで“輸出”
派遣先としては社会主義国家として深い関係を持ち、隣国でもあるロシアと中国が断トツなのは間違いないようだ。宮塚講師は両国に約2万人ずつ、計約4万人が働いていると分析している。
北朝鮮の出稼ぎ労働者は年収のうち、7000ドルを本国から“ピンハネ”されるという説もある。年7000ドル×5万人は3.5億ドル。日本円で390億円を超える。
また韓国統一省傘下の統一研究院は、出稼ぎ労働者を「最大で14.7万人」と推定したこともある。これを単純に計算すれば10.2億ドル、約1100億円に達する。北朝鮮が出稼ぎ労働者の派遣に血道を上げることも、国連安保理で出稼ぎが規制対象となる背景も、充分すぎるほど理解できる。
北朝鮮を資金面から干上がらせるためには、ロシアと中国が制裁決議に従うかどうかが鍵になる。だが北朝鮮の派遣労働も多様化していると、宮塚講師は警鐘を鳴らす。
「近年、派遣先がアフリカにシフトしています。北朝鮮は60年代から70年代にかけて、アフリカ諸国と積極的に外交を結びました。現在でもアフリカには独裁的な政治システムの国家が少なくありません。ある種の親和性を背景に、かの地では銅像建設ビジネスの稼ぎ場と化しています。金ファミリーの銅像を建設してきたノウハウを活かし、アフリカの元首にトップセールスをかけるわけです。契約が取れれば、労働者も輸出することが可能です。北朝鮮にとっては一石二鳥のビジネスだと言えます」
他にも軍事基地の建設を請け負うなどの事例が明らかになっているというが、北朝鮮側は労働力の“単価”を上げようと、着々と準備を進めているという。
「低賃金の単純労働者を輸出しても、利幅が薄いのは当然です。そこで北朝鮮は、より付加価値の高い労働力を輸出しようとしています。例えば医師です。技術レベルは低く、痩身や美容というエステティシャンに近い存在ですが、モンゴルや東南アジアで開業している例を確認しています。珍しいところでは、イタリアなどで美術品の修復を手がけています。社会主義国家ですから、美術には力を入れ、それなりの技術力を持っています。それを輸出しようというわけです」
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