それでも中国の2倍の強度と高品質… 新聞が書かない「神戸製鋼」事件の裏側
電気自動車に不可欠
先の自動車業界関係者が続ける。
「ご存じのように、国内の鉄鋼メーカーは新日鉄住金、JFE、神鋼の3社体制です。ただでさえ鉄鋼価格が上がり気味なのに、この問題で神鋼を追い詰めて、取り引き量を削ってしまうと上位2社の寡占になってしまう。価格を高騰させないためにも、各社とも神鋼との付き合いは大事にしたいと考えているんです」
また、国内の鉄鋼メーカーでアルミ製品を自社生産しているのは神鋼だけという事情もある。
「アルミの合金は、これから普及する電気自動車(EV)に不可欠です。だから、この不祥事で神鋼を潰すわけにはいかないというのが自動車業界の総意なのです」(同)
市場を安定させる意味でも、技術を育てる意味でも、神鋼の存在は欠かせないというのだ。
となれば、今回の不祥事で中国の鉄鋼メーカーがつけ入るスキもなさそうである。中国企業に詳しい経営コンサルタントの田島章司氏も言うのである。
「中国では鉄鋼メーカーがデータを改竄してもこんなに騒ぎになることはありません。一方で“これは当社の検査で合格しました”と言ってきても眉唾ものばかり。極端な話、日本の製品は、中国製品に比べて2倍安全だといっていい。金属製品もしかりです。特に人の命にかかわるような製品に関して、中国製がとって代わることは当分ないでしょう」
中国の製造現場には、皮肉も込めて「偸工减料」という言葉がある。「偸工」とは手抜き、「减料」とは材料を間引くという意味だ。神鋼のデータ改竄より、よっぽど怖いに決まっている。
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