リアル「監獄のお姫さま」たちはどんな生活を送っているのか? 体験者はこう振り返る

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根強い人気の女囚モノ

 10月にスタートした新ドラマ「監獄のお姫さま」(TBS系・火曜夜10時~)は、奇才・宮藤官九郎脚本ということに加え、小泉今日子や菅野美穂が女囚を演じるという意外性もあって初回から話題となっている。

 今年はすでに「女囚セブン」(テレビ朝日系)という連続ドラマもあったので、にわかにテレビ界に「女囚ブーム」が起きているようにも見えるのだが、そもそも「女囚モノ」は70年代~80年代に日本のみならずアメリカなどでもポピュラーなジャンルだった。

 梶芽衣子主演の「女囚さそり」シリーズや、「エクソシスト」の少女役だったリンダ・ブレアが「汚れ役」に挑戦した女囚映画などを懐かしく思い出す年配の方もいることだろう。日活ロマンポルノには、もっと露骨なお色気路線の女囚映画もある。

 しかし、実際の女囚はどんな生活をしているのか。映画同様、キャットファイトが本当に行なわれているのか。ロマンチックな恋愛が生まれることもあるのか。

 健全な市民には、なかなか想像もできないその実態を垣間見ることができる貴重な記録が『組長の妻、はじめます。 女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』(廣末登・著)だ。同書は犯罪学者である著者が、高級車窃盗団の女ボスなどの経験を持つ「亜弓姐さん」の半生を聞きとった労作。

 ここで亜弓さんは、刑務所での生活(覚醒剤、窃盗罪などで服役)を生々しく語っている。いくつか印象的なエピソードを紹介してみよう(以下、同書より抜粋・引用)。

①刑務所内のいじめ

 亜弓さんは、「部屋(舎房内)で、いつも文句言われてイジメられているビビ子(オロオロしているいじめられっ子)を見ておられず、同房者に文句言っていました」という。

 こういう刑務所カーストの下に居る服役者は、「他人の洗濯物を押し付けられたり、掃除をやらされたり」する。一人がそうすると、他の者も尻馬に乗って押し付ける。

 洗濯は冬でも真水で手洗いなので、そういういじめられっ子の手はアカギレだらけだったという。

②刑務所内の高齢化

「刑務所の中も高齢化が進んでいますから、尿漏れのオバさんを、同房者がヨゴレ的に扱うのですね。

 たとえば、洗濯物を、その人の分だけ一緒にしないとか、干す際は当番ではなく本人にさせるとか(触りたくないから)、あからさまに嫌悪の目を向けて差別するのですね。

『あんたら、なんしよんね。私、そんなの見たらムッチャ気分わるいわ』言うて、改めさせたこともありました」

③刑務所内のロマン

 亜弓さんがロッカーの扉を開けたら、未使用のセッケンが「よければ使ってください」というメモと一緒に入っていたことがあった。他にも「ファンなんです」という内容の手紙や、プレゼントが入っていたことも。

 複雑な気持ちではあったが、食事の時などにこっそり好きなものをもらえることもあり、それは素直に嬉しかったという。

④刑務所内の喧嘩

 亜弓さんが新入りでありながら、モテたのには理由がある。刑務所内での地位を確立させた次のような事件があったのだ。

「刑務作業中にオナベの受刑者(彼女は30代前半ぐらいの年齢で、タッパは小さいくせに、髪の毛を短くして、ガニ股で肩をゆすって歩き、男気取りでいつもイキがっていました)が、50歳がらみの工場担当だった大人しいA担先生(刑務官)を、ボコボコにしていたのです。

 私は金網を作る班で、後方はミシン班でした。皆、そのオナベのどう猛さに呑まれて、トラブル敬遠とばかりに目を伏せています。

『触らぬ神に祟りなし』『見て見ぬふり』『短気は損気、損気は満期』が刑務所のモットーであることは私も知っています。しかし、オナベは無抵抗なA担先生を一方的に殴っています。

 なにが原因かわかりませんが、モノには限度がありますから、私は立ち上がりました。ミシン班のクミちゃんも私を見て頷き、席を立ちました。

『おい、あんた、いい加減に止めんかい』と私がオナベの肩に手を置きますと、振り向きざま『なんか、ワレやるんかい』と、こちらに矛先が向きましたから、私は彼女の両手を封じて床から持ち上げました。

 そこでやっとB担当の先生が非常ボタンを押し、他の先生が撮影用のビデオカメラを持って集まってきました。

 その間の数分間、私は、オナベの両手を封じてつるし上げていました。このオナベは、別に個人的な恨みがある憎い相手ではなかったので、私は殴ったりはせず、ひたすら拘束していただけですが」

 当たり前だが、本当の刑務所には梶芽衣子も小泉今日子もいない。その後、亜弓姐さんは2度目の服役生活において、林真須美という超有名人の隣人として暮らすこととなる。その際のエピソードも語られているが、誰もうらやましがらないのは言うまでもないし、現在、すっかり更生した亜弓さんは、二度と刑務所には戻りたくないと語っている。

デイリー新潮編集部

2017年10月25日掲載

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