政府発表の「4%成長」実は「マイナス9・9%」? アベノミクスの実際の成果は…
GDPに“加工”
そうなると、行き当たってしまうのが「GDP」という数値の正体だ。好景気の実感もそれを示すデータもないのに、「力強く成長するGDP」とは何なのか。
辞書を引けばGDPは、次のように書いてある。
〈国内で四半期あるいは1年の間に新しく生産された経済的な価値の合計〉
その意味で「国内総生産」と訳されているが、これでは不親切だろう。
日本でGDP統計を作成しているのは、内閣府の経済社会総合研究所というシンクタンクだ。日本でも有数の統計専門家やエコノミストが揃っており、日々、膨大なデータと格闘するエキスパート集団だ。OBには「官庁エコノミスト」として知られた吉冨勝氏や最近では日銀副総裁を務めた岩田一政氏がいる。
ところで、私達が日頃ニュースで見るGDPは、元々の数値を何度も加工したものだ。しかも、いくつもの種類があることをご存じだろうか。
まず、GDPと一口に言っても、大きく分けて、
〈名目GDP〉
〈実質GDP〉
がある。簡単に言えば「名目」とは物価の上下を考慮していないという意味。そして「実質」とは、考慮した後の数値だ。区別されているのは、GDPが増えたように見えても、物価上昇によるものだったら景気の実態を表していないからだ。だから、「名目」よりも「実質」がより現実に即していることになる。
さらには、それぞれが、
〈季節調整あり〉
〈季節調整なし〉
に分類される。
その意味は後述するとして、これでGDPの出来上がりとはならない。
ややこしいことに、時間の経過によって「速報値」、「改定値」、「確報値」と変わってくる。ざっとあげただけで、我々は12種類ものGDPを見せられていることになるわけだ。たとえば、冒頭の「4%」成長と報じられたのは、「実質」の「季節調整あり」の「速報値」である。
分かりにくいこと極まりないが、次にGDPが、いかにして弾き出されるか見てみよう。
(下)へつづく
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