満島ひかりの「喋るな、クズ」が痛快! クドカンマジック炸裂「監獄のお姫さま」

エンタメ

  • ブックマーク

「木更津キャッツアイ」(TBS)「あまちゃん」(NHK)など、数々のヒットドラマを送り出してきた宮藤官九郎が満を持して火曜10時枠に登場。これまでクドカン作品に花を添えてきた小泉今日子、森下愛子、満島ひかりに、菅野美穂と坂井真紀を加えた5人組が、伊勢谷友介に復讐を仕掛けるストーリーだ。

 そうして始まった「監獄のお姫様」初回。時は2017年12月24日、女たちが右往左往しつつ、EDOミルク社長の板橋吾郎(伊勢谷友介)を誘拐するまでが描かれた。時間軸を入れ替えたり、登場人物たちがだべっている時間が無駄に長かったりする、俗に「クドカンワールド」と呼ばれる手法は、感情移入しにくい側面もある。女たちはどうやらそれぞれ一癖ある過去を持っているらしいが、まだまだ明かされるには至らない。

 じれったい思いを抱いた視聴者には、宮藤官九郎が大人計画という小劇場の劇団出身であることを思い出してもらいたい。演劇とテレビドラマの違いは何か? ドラマは気に入らなかったらチャンネルを変えればいいし、最終話まで見届ける義務もない。しかし演劇は、一度席に着いたら開演から終演までどうしたって目の前の出来事を見届けることになる。クドカンは、そうした「最後まで立ち会った人が楽しめるカタルシス」をほどこす天才なのだ。もちろん、つまみ食いでも楽しいが、絡み合った伏線があざやかに回収される瞬間を粘り強く待とう。

 今回は、板橋の秘書に扮したふたば(満島ひかり)がおにぎりを差し出し、元刑務官であるという身の上を明かすシーンが印象的だった。なぜ刑務官を辞めたのかという板橋の問いに彼女はこう答える。

「図々しいんですよ、犯罪者って。時間巻き戻せると思ってるんです。刑務所のことタイムマシンか何かだと思ってるんです。出てきたら犯した罪がチャラになると思ってるんです」

 板橋がおにぎりにかぶりついたところに「やっぱり返してください、おにぎり」と言ってみせ、「元には戻れないんです」と言い放つ。後ろめたい過去を持つ板橋への、密かなカウンターパンチだった。

 誘拐成功の立役者も満島ひかりであった。女たちから逃げ惑う板橋を、秘書のふりをしたまま駐車場で待ち受け、華麗にスタンガンで殴り気絶させる。息を吹き返した板橋に「喋るな、クズ」とドスの効いた声を浴びせ、とどめの電撃。テーマソングである安室奈美恵の「Showtime」にバッチリハマる、ショウタイムであった。

 どうやら、女たちの目的は「6年前に起こった爆笑ヨーグルト姫事件の裁判のやり直し」らしい……。爆笑ヨーグルト姫というネーミングもぶっ飛んでいるが、サンタクロースの衣装、クリスマスのイチゴのケーキ、殺された女の血がにじむワンピースなど、随所に紅白のモチーフが散りばめてあるのも見逃せない。日本の年末は「紅白」で、女と男が対決すると決まっているものだ。

 今夜放送の第2話では、時間をさかのぼって女たちの出会いが描かれる。舞台は刑務所。いよいよ、最強の5人組のバックグラウンドが明らかになってゆく。

西野由季子(にしの・ゆきこ)(Twitter:@nishino_yukiko) フリーランサー。東京生まれ、ミッションスクール育ち、法学部卒。ITエンジニア10年、ライター3年、再びITエンジニアを経て、永遠の流れ者。新たな時代に誘われて、批評・編集・インタビュー、華麗に活躍。

2017年10月24日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。