データ改竄「神戸製鋼」は東芝の二の舞か 命運握るは“米国”
そのニュースに経済界が震撼した。大手鉄鋼メーカーの神戸製鋼所が、10年ほど前からアルミ製材の品質データを改竄していたことを明らかにしたからだ。納入先は約200社にのぼり、国産初の小型ジェット機MRJや新幹線、自動車などにも使用されている。果たして、東芝の二の舞になる危険はないのか。
「深く反省し、お詫び申し上げます」
三連休最中の10月8日に都内で開かれた記者会見で、神戸製鋼の梅原尚人副社長はこういって深々と頭を下げた。データ改竄が発覚したのは8月中旬。アルミ部門の責任者の調査がきっかけだったという。
「神戸製鋼には“前科”があるので、あの説明を鵜呑みにはできません」
こう語るのは、会見に出席した経済誌の鉄鋼業界担当記者だ。
「実は、昨年6月に神戸製鋼の子会社で、データ改竄によるJIS、“日本工業規格”法違反が発覚していたのです。今回、梅原副社長は“JIS規格の強度は超えている”と強調しましたが、納入したアルミ製材の安全性を確認したわけではないのに大丈夫ですかね」
安全にかかわる問題だけに、独自に検査を行った企業も少なくない。JR東海とJR西日本は、“十分な強度は確保されており、安全性に問題はない”とした上で、順次部品を交換していく方針だという。
「三菱重工も“安全性に問題はなく、MRJの開発にも問題はない”とコメントしています。MRJは量産体制が整ったばかり。今後、再調査して部品に欠陥が見つかれば、さらなる納入延期に繋がりかねないでしょう」(同)
米国次第
〈重大な問題であると認識している。車種や安全性への影響を早急に確認する〉
トヨタ自動車がこう懸念を示したように、今回のデータ改竄でもっとも“被害”を受けそうなのが自動車業界だ。専門誌のデスクがいうには、
「自動車業界では軽量化が時流。車体には強度のアルミを採用していて、ほぼすべての自動車メーカーが何らかの形で神戸製鋼のアルミ製材を使用している。JIS法違反でなくても、リコールになれば費用はすべて神戸製鋼の負担。リコールの対象台数次第では、経営の屋台骨が大きく揺らぐことになります」
神戸製鋼の2017年3月期決算を見ると、売上高9237億円で、約63億円の赤字。リコールの規模によっては屋台骨が揺らぐどころか、会社存続の危機にも発展しかねないのだ。
「神戸製鋼は鉄鋼業界3位ですが、アルミ業界でも2位。アルミの国内最大手は、4年前に住友軽金属工業と古河スカイが経営統合したUACJで、神戸製鋼との2社でシェア50%を超えている。神戸製鋼が危うくなれば、自動車メーカーがアルミ製材の調達に苦慮するので、監督官庁の国交省も処分の判断に苦慮するはずです」(先の記者)
だが、ある国交省OBは米国の判断が神戸製鋼の命運を握ると見る。
「問題のアルミ製材は、川崎重工を通じてボーイングの機体の部品に使用されている。ボーイング社と米政府機関が神戸製鋼へ立ち入り検査をして、その上で“クロ”だと判断すれば、エアバッグのタカタのように米国が神戸製鋼へ“ペナルティ”を科す可能性も否定できません」
“解体”が進む東芝どころか、破綻したタカタと同じ道を歩まなければよいが。