大粛清「巨人」の次期監督 長嶋が頭を下げて「松井秀喜」大穴は「イチロー」
かばう人がいれば、無能の烙印を押す人もいる。だが、CS進出を逃した高橋由伸監督(42)の首が寒くなるのは間違いない。ならば次は松井か、ひょっとしてイチローという声も飛び出しているのだ。ストーブリーグより早い巨人軍の次期監督人事。
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「僕から見れば由伸はよくやったと思います。勝たなきゃいけない戦力を揃えてもらいながら怪我人ばかり。でも、それも含めて監督の責任にされるんです」(デーブ大久保氏)
「スカウトの連中が全然働いとらん。ドラフト1位だってこの数年活躍しとらんでしょう。由伸は悪くないよ」(張本勲氏)
CS(クライマックスシリーズ)出場を逃し11年ぶりのBクラスが決まった巨人の指揮官をOB2人はかばうのだが、たしかに、今季の巨人は戦力に恵まれなかった。30億円かけて大型補強したものの怪我人続出のうえにDeNAから獲った山口俊(投手)が暴力事件を起こす始末。その結果、13連敗を喫したのはご存じの通り。だから、終盤に盛り返してCS争いが出来たのは、頑張ったと見る向きもないではない。
が、球団と3年契約を結ぶ高橋由伸監督の2年目の通信簿を巨人担当記者につけてもらうと――。
「分かったのは、采配の能力がないということです」
と手厳しいのである。
「まず、驚いたのは監督が積極的にサインを出していなかったことです。たとえば、キャッチャーの小林誠司は初球から打ちに行って凡打というパターンが多い。他球団なら監督自身が場面に応じて“待て”などと細かくサインを送りますが、由伸監督はやっていなかった。8月下旬になって、周りがこのままじゃマズいと進言したのか、ようやく細かなサインを出すようになった」
巨人の打撃データ(9月まで)を見るとチーム打率はそこそこだが併殺打がリーグでトップ。犠打数は下から2番目である。これも理詰めの野球が浸透していない証し、と指摘するのはベースボールジャーナリストの大冨真一郎氏。それを示す象徴的な試合が9月3日のDeNA戦だった。
「この日は1試合で3回も送りバントを失敗しており、いずれもダブルプレーでイニングを終えています。試合は0対1で敗退しており、バントが出来なかったために負けたようなものです」
今季の由伸監督には覇気もなかったと言うのは先の巨人担当記者だ。
「たとえば、選手が怪我したら“大丈夫か!”と飛び出してゆくものですが彼はやらない。まわりを見ながらやっと腰をあげる感じです。そんな態度は選手にも伝わっていて、今シーズン途中にトレードで楽天に放出されたクルーズなどは、相手チームがおかしなプレーをしたとき監督が抗議しないことに不満をぶちまけていましたからね」
それでも、不思議なことに、由伸監督の続投は既定路線である。9月13日に老川祥一オーナーが「4位以下でも続投」を明言する。それというのも、「あの御大が後ろにいるから」と説明するのは別のスポーツ紙記者だ。
「そもそも、由伸はなりたくて巨人の監督になったわけじゃない。現役最後の年も2割8分近く打っていたのを、阪神・金本監督の就任が発表になったものだから慌てて“華のある対抗馬”として球団側が頼み込んだのです。読売新聞のドン・渡辺恒雄主筆の後ろだてがあったのは言うまでもありません」
それもあってか、渡辺氏は5月に球場に姿を見せた際も由伸監督の采配には言及せず、
「(FAで獲得した)3人、ここにいないじゃないか。(中略)見る目がなかったんじゃないか」
とフロント陣を批判。
球団ワースト記録の13連敗を喫した際も由伸監督は責任を問われず、代わりにばっさり切られたのが堤辰佳GMだった。
「おかしいのは、渡辺さんが球場に来ると、読売グループの人間も記者に交じってICレコーダーを回しているんですよ。それが巨人の上層部に文書で提出される。どこの記者がどんな質問をしたかまで細かくね。渡辺氏には直接聞けないので、それを読んで、フロントがあれこれ“忖度”し人事を話し合っているのです」(前出の巨人担当記者)
で、今オフ、誰が由伸監督の代わりに犠牲者になるのかというと、一番首が寒いのはヘッドコーチの村田真一あたりとも言われている。だが、当の由伸監督だって来年以降は分からない。3年連続でペナントレースを制することが出来なければ、渡辺氏だってかばい続けることが難しいからだ。
それでなくとも巨人戦の収入は年々厳しくなっている。かつて放映権収入が年間100億円以上あったほどのドル箱も今は昔。
「テレビ局が次々と地上波の放映をやめ、放映権料がひと桁安いBSやCSに代わっています。今や巨人戦が地上波で流れるのは月数回だけ。視聴率も10%を超えることはめったにありません。TBSラジオも今季限りで撤退することから頼みは直接球場に来る観客ですが、由伸監督になってからも減っている。来季後は渡辺氏も見切りをつけるのでは」(同)
となれば、由伸監督の「次」の手当ては、今オフから準備を始めなければ間に合うまい。果たして誰なのだろうか。
松井「招聘作戦」
これまで取り沙汰された候補は江川卓、桑田真澄、それに現役からは阿部慎之助などが挙がっているが、何と言っても“大本命”は松井秀喜(NYヤンキースGM特別アドバイザー)。しかし、これもすんなりとはいかない。
「何より松井は渡辺氏のことを快く思っていない。巨人時代、渡辺氏が強引に獲った清原との関係がうまくいかずチームの中で孤立してしまったことが原因です。AV狂いだと噂を流されたこともある。ヤンキースに行ったのも嫌気がさしたからと言われているほどです」(前出のスポーツ紙記者)
もちろん、フロントはそのことも承知している。そのため、報知新聞出身でヤンキース時代に松井担当の広報をやっていた人物をフロントに入れ、「次」のために人間関係を切らさないようにしているという。
「松井も“いずれは巨人の監督に”という気持ちはある。もし、彼の背中を押せるとしたら、巨人時代の監督で一緒に国民栄誉賞をもらった長嶋茂雄氏しかいません。長嶋さんが頭を下げたら松井も断れないでしょう」(同)
いや、松井はすぐに無理でも、まさかの「大穴」がいると明かすのはジャイアンツ関係者だ。
「マーリンズのイチロー選手です。2009年の暮れ、彼が自主トレのために川崎のジャイアンツ球場に来たことがあるのですが、選手はもちろん、練習を見に来たファンの盛り上がり様が凄かった。今のところ彼は50歳まで現役を続ける意向を明らかにしていますが、監督含みでもいいから、巨人に欲しいという声は今もフロントに根強いのです。渡辺主筆も人気さえあれば生え抜きかどうかにはこだわらない」
イチローの年俸は約200万ドル(約2億2000万円)。渡辺主筆ならポンと払うに違いない。