北朝鮮が日本に突き付けた課題――「核の傘」は守ってくれない

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“ほかにやりようもない”ことが問題

 実際、2003年、アメリカのイラク攻撃に日本政府はいち早く支持を表明した。世界の「ならず者国家」と戦うというブッシュ大統領を小泉首相は強く支持した。イラクを始めとする中東諸国など、もともと日本とまったく何の緊張関係もない地域であり、そもそもイスラム教徒と仏教徒が対立する理由もない。にもかかわらず、アメリカの戦争にどうして日本が支持を表明したのか。それは、北朝鮮問題(および尖閣問題)において、アメリカの支援を得るためであった。

 さらに05年には、日米両政府の間で、「日米同盟:未来のための変革と再編」なる合意がなされた。ここでは、日米両国は、世界秩序を破壊しかねない「ならず者」との対決を謳っているのである。日本は何やらカウボーイの子分になったようなものだが、これは、アメリカからすれば対テロ組織との戦争であり、日本にとっては、北朝鮮との緊張を念頭においた合意であった。

 こうして、日本の対北朝鮮対策は、ほぼ全面的にアメリカ頼みということになる。そして、日本の拉致問題は、アメリカの最大関心事である核問題に飲み込まれてしまう。日本政府も、拉致問題と核問題を切り離すというスタンスに立ち、アメリカと協調して核問題に関心を集中することとなった。安倍首相も、もっぱらアメリカとの共同行動による核とミサイル開発の停止を重視している。しかし実際には、この両者は切り離せないのである。それは、両者とも国際的なルールを無視する金独裁政権の体質に関わる問題だからである。

 現下の日本の対応は、あまりあてにならない「国際社会の圧力」やら、トランプ氏のアメリカ政府に依存するほかない。これはまぎれもない現実で、現状では、アメリカとの緊密な連携という名の対米依存よりほかにやりようもない。

 しかし、実は、そのこと自体が問題というべきである。“ほかにやりようもない”という事実が本当は問題なのだ。本来は、北朝鮮問題に向けた、日本独自の対応があってしかるべきであろう。拉致問題でいかに北朝鮮に圧力をかけるか、また北朝鮮の脅威に対して、日本独自の防衛網をどう構築するのか、それらは本来、日本独自の防衛力と防衛政策の問題なのである。日米同盟を否定するものではないが、日本を守るものはまずは日本の自主的、自立的防衛である、というのが原則であろう。

 もちろん、物事は原則通りにはいかない。とりわけ国際関係に関わる事項は原則通りには運ばない。現実との兼ね合いが必要となろう。「やむをえないこと」もいくらでもある。それでも、自分たちの国を自分たちの手で守ることが防衛の原則である、という、その基本は変わらない。ところが、戦後日本では、そのもっとも基本的な原則がほとんど顧みられなかったのである。

 戦後日本は、平和憲法と日米安保体制という「絶妙の組み合わせ」で、自国の防衛についてほとんど何の関心も払わず、米軍に国を守ってもらうという選択をしてきた。それをよしとしてきた。しかしこの日本の防衛をめぐる「戦後レジーム」が、いま行き詰まっている、といわねばならない。

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