3冠獲得の快挙! バイオレンス、純愛、お笑いと大きく振れ続けるビートたけしの「振り子理論」とは?
まずはこの1カ月余のビートたけしさんの仕事のおさらいをしてみよう。
・9月9日、10日=フジテレビ27時間テレビの総合司会
・9月22日=「初の書下ろし純愛小説」の『アナログ』刊行
・10月7日=「アウトレイジ 最終章」公開
・10月14日=「バカについて語り尽くした」新書『バカ論』刊行
これ以外にも、この間、「アウトレイジ」宣伝のために、テレビ番組に軒並みゲスト出演。さらにテレビ東京では朝の帯の生番組に出演、しかも1回は無断欠席というオチまでつけた。
極端な暴力から、ピュアすぎる純愛、そしてお笑いと、幅広すぎる活躍ぶりは驚異的であるが、一方で古くからのファンのなかには、「振り子理論」を思い出した方もいるのではないだろうか。
「振り子理論」は、たけしさんが仕事について語るときの重要なキーワード。映画「HANA-BI」がベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したあとに自ら解説している文章をご紹介しよう(『私は世界で嫌われる』より)。98年刊行の本なので、もう20年近く前になるのだが、すでに『アナログ』の出現を予言しているかのような記述もあるのが興味深い。
「『HANA-BI』のテーマには、暴力があった。おいらは同じことを何度も続けてやるのは嫌なんで、次は暴力じゃなくて、その対極にある『愛』みたいなものを描きたいと思っている。マザー・テレサみたいな主人公が出てくる映画を撮ろうかなと。
ちょっとは暴力も出てくるけど、じかに殴っているところを見せることはなくて、せいぜい誰かの鼻血が出ていることで、殴られた後だということを暗示したりする。
撃つとか一切なしにして、さて何ができるかという、それをまた自分に課してみたいんだね。
振り子の理論でいえば、暴力とは反対の方向へ振れるだけ振っておけば、今度暴力の側へ戻ってきたとき、今までよりも、もっとずっと過激に表現することができる。
振り子も愛と暴力の間でだけ振れるんじゃなくて、お笑いの方へも振ってみたいし、あらゆるところへ振っていく。その振幅が大きければ大きいほど、他へいったときもっと大きいことができる。
おいらは、平面的な振り子ではなくて、360度あっちこっち振れて、結果的には水平にぐるぐる回ってしまうぐらいなことをやりたいんだ。
もっと大きく言えば、お釈迦様の手のひらの上で、暴れるだけぐるぐる回りたいね。ビートたけしの手のひらの上で北野武が回っていたり、その逆があったりという感じなんだよ」
その後も振り子の振れ幅は広がる一方なのはすでに述べた通り。
『アナログ』は全国各書店で1位を獲得し、発売からわずか3週間余で10万部を突破。「アウトレイジ 最終章」も各地の映画館で1位を獲得している。さらに、14日に刊行した新著『バカ論』も、発売直後から爆発的な売れ行きをみせ、15日には紀伊國屋書店全店新書部門で見事1位に。こんな70歳は、日本はもちろん世界にも類を見ないだろう。