北朝鮮とアメリカ、そもそも何をめぐる対立? 日本が置かれた立場とは
アメリカにとっての“北朝鮮問題”
考えてみれば、奇妙なにらみ合いである。北朝鮮は、いずれ韓国へ侵攻して朝鮮半島を統一したいという意図はあるだろうが、いまそれができるとは考えていないだろう。日本の領土をわがものにするという意図もない。アメリカを攻撃するといってもアメリカ本土に侵攻する意図はない。アメリカ側も、北朝鮮を自らの属国にしたいわけではない。戦争理由の大半を占める“領土問題”はここにはない。
では一体、何をめぐって両国はにらみ合っているのか。アメリカにとっての“北朝鮮問題”とは何なのか。次の三つが考えられる。第一に、北朝鮮の核や化学兵器などの、中東・反米政府やイスラム系テロリストへの流出問題。もし仮に核がテロリストの手に渡ると、これは決して無視しえない大きな脅威となる。第二に、北朝鮮が朝鮮半島の統一を掲げて韓国へ侵攻すれば、同盟国であるアメリカは戦闘に踏み出すほかなくなる。そして、第三に、北朝鮮という独裁国家が“自由・民主主義・人権”というアメリカの掲げる国際秩序の価値観に反する点である。
第二の、北朝鮮による朝鮮半島の統一は、現時点では考えにくい。第三の、自由・民主主義の世界秩序を守るという“大義名分”も、現下のトランプ大統領のもとでは現実性をもたない。幸か不幸か、トランプ大統領の“アメリカ第一主義”とは、アメリカが世界の警察官の役割を降りる、という宣言だったからである。
したがって、アメリカにとっての最大の関心は、北朝鮮による核開発ということになる。核拡散の防止が最大の目標であり、それは、アメリカへの核の脅威を避けるためである。だから、アメリカは北朝鮮の核保有を容認しつつ、現状での開発凍結で暫定的な合意に持ち込む可能性はある。しかし、北朝鮮が、保有する核を流出させないという保証はない。
さて、それでは日本はどのような立場にあるのか。日本にとっての北朝鮮問題とは何なのか。
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